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未知倶楽部コラム

いま再び考えたい「道の駅の役割」(6月実施のアンケート結果から)

2009年06月29日

1993年5月に初めて道の駅が登録されてから(当初は103箇所からのスタートでした)、今年の春にはいよいよ全国で900箇所にまで道の駅が増えました。

それにともない利用者の道の駅への期待は基本機能である休憩、情報提供を超え違う魅力へシフトして来ております。

わたしたち未知倶楽部は、道の駅には他の小売業態にない魅力がたくさん備わっていると常々考えて参りました。それは地域の魅力であり、迎えてくださる人の温かみであり、道の駅を巡る過程で得られる穏やかな時間であり、そして「道の駅がある」という安心感でもありましょう。

その一方で、道の駅の駅長さんたちが、そうした「道の駅らしさ」を利用者に提供するために並々ならないご苦労をなさっていることも存じております。

私たちがそれぞれの駅長さんたちからそのお悩みやお取り組みを拝聴するにつけて、「このお話を別の駅長さんたちにお聞かせしたら、きっとお役立ていただいたり、励みにしていただいたりするのではないか」と思うこともしばしばです。

私たちは、道の駅をとりまく課題の多くが、道の駅どうしの連携によって解決できる、と考えているのです。

去る6月5日に、未知倶楽部掲載306駅の駅長さんにアンケート調査票を送付させていただきました。
これは、道の駅の駅長さんが道の駅の独自性をどのように捉えていらっしゃるか、そして道の駅相互での情報連携の必要性をどのように感じていらっしゃるか、などに関連していくつかご質問させていただくものでした。

具体的には、次のような設問を投げかけさせていただきました。

・道の駅の経営改善に役立つ取り組みについての実施状況や考え
・経営改善における課題や、取り組みを阻害する要因
・他の道の駅との情報共有に対する態度
・道の駅と他の商業施設との差別化要因

突然のお願いであったにもかかわらず、87駅の方からご回答を頂戴しました。この場をお借りして御礼申し上げます。


結果の概要について、以下にご紹介させていただきます。

(1)他の道の駅での良い取り組みや工夫を情報共有することに対して、その重要性を肯定的に回答してくださった道の駅が7割にも上りました。「他の道の駅の事例が役に立つかどうかは場合による」という留保意見の方も含めると、実に9割以上の道の駅の方が、なんらかの形で他の道の駅との情報共有が役 立つものと捉えていらっしゃることがわかります。


グラフ
道の駅どうしで連携することの重要性について


また、自由回答としても連携の重要性を訴えられるご意見が多数寄せられました。
その一部をご紹介させていただきます。

・経営形態は異なっても、同じ看板を背負っている道の駅として、課題は共通のものが多いと感じている(東北地方の道の駅)
・同じ課題にぶつかるところと協力できればより高みに向かえると思う(近畿地方の道の駅)
・(他の道の駅が)どのような努力・苦労をしておられるのか事例を知り、活かしたい(中国地方の道の駅)
・直接(他の道の駅を)訪問をし、お話も伺いたい(九州地方の道の駅)

また、他の駅の取り組みに関心があるテーマとして、「商品・料理メニューの開発」や「地元色の演出」などが数多く挙げられました。

その一方で、経営改善における課題や阻害要因として、次のようなご意見を承っております。

・人材確保・後継人材の不足(中部地方の道の駅)
・出品者や生産者とのコミュニケーション強化(関東地方の道の駅)
・テナントどうしでのコミュニケーション強化(東北地方の道の駅)
・夏季観光シーズン以外の集客の困難(北海道の道の駅)

ここでは一部だけをご紹介するにとどめましたが、道の駅の方が抱えていらっしゃる課題やお悩みは、他の道の駅と共通する部分が大きいと私たちは改めて認識しております。

(2)道の駅の駅長さんは道の駅の役割をどのように考え、他のロードサイド型の商業施設との相違をどこに追求なさっているのでしょうか。これについては、自由にご意見をお寄せいただきました。とても興味深いご意見や鋭いご指摘を多数頂戴しております。ここでもやはり一部のみになりますが、ご紹介させていただきます。

・マニュアル通りの対応ではなく、地域性を出していきたい(中部地方の道の駅)
・(地元の)産品の定期的な発信(九州地方の道の駅)
・駅員の「素朴でアットホーム」な対応でなつかしさを感じさせる(中部地方の道の駅)
・どこよりも安全で品質のよい安い商品(近畿地方の道の駅)
・公共施設として利益追求に偏重することなく、道の駅基本機能の充実とサービス提供の継続が重要(北海道の道の駅)

こちらも、駅長さんたちのご意見を総合すると、いくつかのポイントが浮かび上がってくることが判りました。それは、「地域の特徴を演出すること」「素朴で親切な接客に心がけること」「地元の良い産品や食材を発信すること」「生産者と消費者を身近にし、消費者が安心できる商品を提供すること」、そして「公共施設としての利便性を堅持すること」、といった点です。


以上、簡単にではありますが、アンケートの結果の概略をご説明させていただきました。

未知倶楽部と致しましては、道の駅の方々からのご意見を拝見して、「道の駅どうしで情報を共有化することによって道の駅全体の価値を高めあうことができる」という点に改めて確信を持ちました。

確かに、ひとつひとつの道の駅にはすべて異なります。チェーン店のように同一であるはずがありません。駅長さんのお考えはお一人お一人それぞれに個性的ですし、道の駅をとりまく地域特性や環境もどれ一つとして他の道の駅と同じということはないでしょう。

しかしながら、「道の駅」という言葉によって利用者から期待される、そして国民全体が抱いているイメージがある以上、その理念については道の駅どうしで共感しあえる部分も多いはずです。これは、今回のアンケート調査からも読み取れました。

そして、多くの駅長さんに賛同していただいたとおり、道の駅が直面する課題や阻害要因について、道の駅どうしで共有することによって、解決に向かって知恵を出し合える道筋があるのではないでしょうか。

私たち未知倶楽部は、道の駅の皆様どうしが交流しあいながら直面する共通の困難に立ち向かっていけるような、そういった情報交換の「場」を提供したいと考えております。

ひとりひとりの駅長さんがご苦労なさっていることが、その道の駅の向上につながるだけでなく、「道の駅」全体の財産となってゆけば、利用者ひいては国民の「道の駅」に対する愛情もより高まるのではないでしょうか。こういった考えを胸に、未知倶楽部は活動を続けて参る所存です。

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未知倶楽部室

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