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未知倶楽部コラム

駅長さんは地域のコンシェルジュ

2006年7月24日

久しぶりに筆を執らせて頂きます。筆不精をお詫びします。

最後にコラムを書いた時以降、徳島、香川、青森、宮城、北海道へ行って参りました。沢山の人たちとの出会いがありました。お忙しいなかご対応頂きました皆様、有り難うございました。

また、7月10日には道の駅フォーラムを開催しました。全国から約30の道の駅代表にご参加いただき、交流会も含め大いに盛り上がりました。道の駅の駅長さんの熱い情熱に心が打たれました。参加くださった道の駅の代表の方には改めて御礼申し上げます。フォーラムのレジュメを公開しましたのでぜひご覧ください。

さて、本日は道の駅の駅長(代表)の役割についての私見を述べさせていただきます。

常々私はいろいろな場で唱えておりますとおり、道の駅は地域のマーケットプレースだと思っております。地域の人、業者から商品を仕入れそれを販売する場です。また、地域のイベント、観光スポット等地域情報を紹介する場です。そして域外の利用者がそれらを求める場でもあります。

間違いなく道の駅は地域で最も人が集まる場です。これは昔で言う‘市’です。だからこそマーケットプレースなのです。この‘市=マーケットプレース’を仕切る人。それが道の駅の駅長さんです。

私は道の駅の駅長さんのことを地域のコンシェルジュ(Concierge)と呼んでおります。本日は道の駅の場合におけるコンシェルジュの役割について考えたいと思います。

一般的なコンシェルジュの定義で道の駅の駅長さんの役割を述べると次のようになります。

『地域のネットワークの核となり、地域の人、特産品、観光スポット、温泉、レクリエーション施設、宿、そして地域の祭り等のイベントを利用者に対して効果的に紹介し、利用者へのおもてなしの精神を発揮することを通じて、訪れた方に地域へのロイヤルティーを高めてもらうこと。』

私はそこからもう一歩踏み込んで以下のように役割を定義したいと思います。

『道の駅を核とした地域資源の資産価値を向上させ、地域が経済的・精神的に豊かになるようにすること。』

私は色々な地域を訪れそして拝見しておりますが、地域資源が充分に上手く活用されていないなといつも感じております。地域の‘売り’は特産品、青果物といった「モノ」に偏っている場合が非常に多いようです。イベントなどの「コト」の世界でがんばっていらっしゃる道の駅もありますが、全体の道の駅を見渡すとやはりその比率は低いです。また、地域の人という点で言えば、たとえば生産者の顔はよく紹介されていますが、地域文化を守っている人、地域の人気者などが道の駅で紹介されている例は極めてまれです。

地域文化をどう‘売り’にするか――まだまだ大きな課題があると思います。更に、貪欲な私が感じるには、まだまだ活用出来る資源があるのではないでしょうか。

場を都会に移します。現在、都会の人は地域に対して熱い視線で見つめています。とりわけ「アクティブシニア」「団塊の世代」と呼ばれる人たちです。時間もあり、金もあり、ゆとりもある人たちです。自然が破壊され、人の心が失われている都会で、長い老後を生活したいとは、彼らの多くは思っておりません。

彼らはそれらが残っている田舎での生活に憧れています。また、その人数たるや何千人単位ではなくひょっとしたら何十万人、何百万人かもしれません。しかし彼らは田舎暮らしをしてのんびりしたい訳ではありません。のんびりするにはエネルギーが有り余っています。彼らは都会で身に付けた技能を社会に役立てたいのです。

とはいえ、彼らは田舎の地域社会にはなかなか入り込めません。地域が排他的だからです。成功している地域にこそ、こうした地域が多いのではと最近感じます。

外部の人間にとって閉ざされた世界へと彼らを導いてくれる人が必要です。その役割を道の駅の駅長さんが担ってくれれば大いに感謝される筈です。

また地域には稼働率の低い資産があります。公共温泉などの地域の人にしか使われていない施設。それも殆ど赤字経営です。これらをもっともっと域外の人に使ってもらうことを考える必要があります。また、地域の人が都会の人にプライベートルームとも言える民家を一部開放するのも良いのではないでしょうか。(そもそも地域の人は都会の人に比べると遥かに大きな家に住んでいます)

地域を豊かにする手法は特産品を販売するだけではありません。都会から人を呼び込むのです。なるべくならモラルの高い人を選んだほうが良いです。また、最も効果的なのは彼らを定住させることです。彼らには金だけでなく都会で身に付けた技能があります。人それぞれですが、サラリーマン出身なら経営ができる人が多いです。この技能は地域では求められています。また、都会の人には地域を第三者視座より客体化する眼力があります。平たく言いますと良いもの悪いものとを、他との比較の上で選別するするセンスがあることです。

域外の人が地域の為に思わぬ価値を生み出し地域活性化の原点となっている例は多数あります。大いに参考にすべきです。

私は道の駅の駅長さんにどうやったら都会の人を呼び込み、そして住ませるかという視点であらゆる資源を見つめて欲しいと思っております。そのことにより地域はより豊かになることができると信じております。

『地域社会を豊かにするために、ありとあらゆる地域資源をいかに活用するかを念頭において、地域を紹介すること』、私はこれこそが本当の道の駅の駅長さんのコンシェルジュ機能ではないかと最近感じております。

執筆者

未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹

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