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未知倶楽部コラム

道の駅の姿:成本様の文章に寄せて

2006年6月26日

駅長コラムに寄稿頂きました瀬戸農業公園の成本様のご意見「人と人が交わる所『道の駅』」を興味深く読ませていただきました。大変なご苦労の中で地域活性化のために尽力されている様に心が打たれます。

成本様は「今、道の駅の成功事例は地元特産品、農産物を道の駅に集める仕組みを地域がつくりあげた所です。」と述べておられます。道の駅のあるべき姿に関する非常に示唆に富んだご指摘だと思います。

私は全国津々浦々の道の駅を巡り歩いております。活気がある道の駅とそうでない道の駅があります。歴然とした差が道の駅の間にあるのです。どうしてそのような差が生じているのか常々考えております。また、どうしたら活気のない道の駅に活気を取り戻させることが出来るのかも考えております。

そこで突き当たるのは、そもそも道の駅とは何かという本質的な命題です。

道の駅の三つの機能は‘休憩’‘情報発信’‘地域連携’と規定されております。もっとも、最近では‘防災拠点’‘緊急時対応拠点’等の新しい機能が加えられておりますが、本稿では割愛させて頂き、従来どおりの三つの機能についてのみ考えます。

一般国道を安心して安全に走行するためには、トイレ休憩や仮眠が出来る施設、そして信頼できる道路情報が必要です。三つの機能のうち‘休憩’‘情報発信’の機能はこれに該当します。

地域住民との関わりという観点でいえば、地域情報の提供がありますが、これは‘情報発信’機能に含まれる要件だと思います。それでは‘地域連携’機能は何を指すのでしょうか。勿論、地域住民との関わりを意味していますが、ここの定義が非常に難しいのです。

地域連携という言葉は広義、狭義、軽重を含めて多様な解釈が出来る言葉であり、ここの定義を非常に上手に解釈し、そして運用しているところが成功している道の駅となっているのではないかと感じています。

地域連携と言いますと、地域住民が交流しているとか、あるいは地域ネットワークが出来ているとか、非常にぼんやりとしたイメージが想起されます。道の駅の運営の原則は地域主体主義ですから、このイメージをどのように具現化させるかは地域の方が判断なさればよいと言えます。

しかしながら一方で、道の駅という施設の運営を任されている道の駅の駅長、支配人、従業員という生身の人間の立場へ想いを馳せる必要もあるのでは、とも感じます。大変な維持コストがかかる施設の中で、それに見合った収益を上げなければいけません。公共施設とは言いながら、民間企業に近い業態であるために、国道沿いのコンビニ、ドライブイン、レストラン等との競合関係にさらされて高い収益が求められています。さらに、市町村の財政が逼迫しつつある中、収益構造の再構築が喫緊の課題となっております。

わたしが地域を訪れる際には、道の駅の駅長さんとお話をする機会を持ちます。お話は数時間に及ぶ時もあります。どの駅長さんも、地域との関係で相当にご苦労なさっているのを感じます。駅長さんが高邁な理想を持つほどに、地域の人との具体的な関係構築が難しくなる。これは良く耳にします。行政の協力姿勢の問題も耳にします。

地域にとって道の駅は何なのか? 道の駅を通じて地域をどのようにしたいのか? そのためにはまず地域における道の駅の位置づけが明確にされる必要があり、これが明確になってこそ‘地域との連携’機能が輝きを持って活かされるのではと思います。

成本様の文章にある「地元特産品、農産物を道の駅へ集荷させる仕組みを地域ぐるみで作る」というお取り組み、これは紛れもなく‘地域連携’の姿です。

このような定義を前提として既に前進し且つ進化している道の駅があります。一方、この前提段階で上手く起動していない道の駅もあります。

私は道の駅は地域を代表するマーケットプレースであると見ております。マーケットプレースとは地域住民のみならず地域外の人を呼び寄せ、利益を上げるところです。

加えて、‘利益の上げ方’。これが道の駅にとって極めて重要です。

域外から安易に商品を持ち込む利益流出型ではなく、地域内製率を高め地域にお金が落ちる仕組みを作ることが必要です。その為には地域住民が生み出した資源(特産品、農産物、工芸品、イベント等)を道の駅へ集積させ、且つそれを販売行為へ展開させる仕組み、つまりマーケティング力が必要です。

※誤解なきよう、休憩機能や道路情報提供機能等を軽んじているのではありません。道の駅が利益を追求する行為とこれら基本機能とはそもそも対立図式にはありません。

但し、その前に地域住民の協力、そしてそもそも論ですが、道の駅を地域住民の総意としてどうしたいのか、その議論が必要かもしれません。

私は道の駅同士の連携、それも隣接する道の駅同士だけでなく遠方も含めた広域連携を提唱しています。その意図するところは、駅長さん同士の交流が、新しい道の駅のあるべき姿を作るための非常に重要なファクターであると認識している点にあります。

7月10日に道の駅フォーラムを開催する予定です。色々な地域から道の駅の代表が集い、お互いの交流を図ることを通じて、新しい道の駅を作る道筋をぜひ見出していただきたいと思っています。

執筆者

未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹

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