HOME > 未知倶楽部コラム > 音についての雑感

未知倶楽部コラム

音についての雑感

2006年6月14日

人間には五感があると言われています。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。

道の駅のブランディングに携わっており、景色/景観(視覚)、料理/青果物(味覚・嗅覚)、について主にお話をしておりますが、実は私は聴覚に関連する‘音’というものに大変興味を持っております。

時々思います。日本人ほど音に対して神経が細かく、一方で無神経な国民はないと。

海外に行きます。ホテルのロビー、レストランは基本的には無音です。ところが日本だといたるとことにBGMが流れています。

私の近くの商店街の話です。昔は相当繁盛していたらしいですが、今や大手のスーパーの周りに靴屋、ケーキ屋、釣り道具屋、薬局、小料理屋程度しかありません。週末となると人通りも減ります。この優しい静かな週末に、電柱に備えられたスピーカーから、何故かまったりとしたヘンリーマンシーニのムーンリバーなんかが流れています。
マンション群の谷間なのでヒバリなりウグイスの鳴き声は聞こえません。だからと言って無音の美しさもあるわけで、シチュエーションもわきまえずに余計な音を撒き散らすことは不快です。

さて、道の駅の話です。

私は道の駅を核とした地域には固有の音があると思っております。何も民謡である必要もないし、祭り太鼓の音である必要でもありません。

周辺の風景、流れゆく季節の移ろい、せせらぎ、そして村人の生活シーン、何よりも村人の想い。これらを体現した音です。

私は岐阜県東濃にある加子母の道の駅が好きです。女性のなで肩を思わせる優しい山並み、目の前に映る村人の生活の姿、そして背面を緩やかに流れる加子母川。

そこで音です。

加子母村の山には芸術家の方々が住んでいます。外国の方もいます。そのなかに、原ゆうみさんというピアニストがいらっしゃいます。 昨年3月にバスツアーを行いました。道の駅の川向こうにあるヒノキ作りのふれあいの館で、ささゆり協同作業所の方々にプランター製作を教えて頂き、その後ホールで原さんのピアノ演奏を聞きました。

初春の訪れを告げる暖かい光が差し込むホールで、地域の人と域外の訪問者の心が一つになり聴いた‘風ひかり’。今でもメロディーだけでなく、その情景までもが瞼に浮かびます。

無神経な音は都会に沢山あります。一方、やさしい自然の音は地域にしかありません。そして、どこの地域にも、音の一節一節に村人と自然の魂が吹き込まれた素敵な音楽があるのではと思っております。

是非、私は全国の道の駅でそのような素敵な音楽と出会いたいと思っております。

執筆者

未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹

リンク

ページTOP