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未知倶楽部コラム

大隅、日南を行く(その2)

2006年5月15日

「道の駅酒谷の茅葺屋根は周りの自然と見事に調和している。」4月末、小雨のそぼ降る中、鹿児島大隅を後にして、国道222号線を日南に向かう。宮崎県に入った途中の山中に道の駅「酒谷」はある。野辺駅長はバイタリティ溢れる女性駅長で、昨年まで近隣の坂元棚田(日本棚田百選の一つ)を中心とするグリーンツーリズム事務局を担当されるなど、地域資源をフルに活用した集客交流事業に力を入れておられる。
「道の駅酒谷から車で30分。雨に煙る飫肥城大手門」 道の駅「酒谷」から車で約30分、酒谷川にかかる本町橋を渡ると伊東氏の城下町、飫肥に入る。九州の小京都といわれる飫肥だが、街に入った途端、えもいわれぬ町の品格というものを強く感じた。雨の似合う、実に美しい街並みである。

「道の駅なんごうのウッドデッキから眺めた日南の春の海」 翌朝は雨も止み、春とは思えないほど強い南国の太陽が照り付けていた。海岸沿いの道路はフェニックスが続き、眼下には波状に刻まれた岩を日南の青い波が洗っている。宮崎県南端の道の駅が「なんごう」である。おそらく、この道の駅ほどすばらしい景観に囲まれた道の駅は全国でも少ないのではないだろうか。ウッドデッキからは日南の変化に富んだ海を一望できる。
「ここの道の駅は景色が素晴らしいのですが、アクセスが悪いので、情報発信をしっかりやらないと人がなかなか来ないのです。駅長は地道に情報発信をやっています。」と道の駅スタッフの渡辺さんは言われる。近隣はマンゴーの産地でもある。道の駅ではマンゴーソフトを販売しているが、きらめく海と風を直接感じられるこの道の駅で食べるソフトクリームは絶品である。

道の駅「なんごう」を後に北上し、美しい飫肥杉の連なる山々を越え、道の駅「田野」を過ぎて山中の道の駅「山之口」に着く。ここは宮崎市と都城市を結ぶ主要幹線上にある。道の駅の犬童支配人は、「この道の駅は年配のご夫婦が野菜などをよく買いに来られますよ。」といわれる。今回は時間の関係で見ることはできなかったが、近隣には人形浄瑠璃など隠れた見所もかなりあるようだ。道の駅のレストランで食べたとろろ汁定食はボリューム、味とも申し分ない。地元食材を用いた逸品料理であった。

道の駅「都城」は、北方に姿の美しい高千穂峰を望む場所にある。武永駅長は都城を中心に体験型旅行の開発、実施に携わってこられた方である。道の駅で売る産品についても徹底して地元産にこだわる。「やっと都城の新茶が出始めました。」と香り高い新茶を出していただいた。「地元、そして旬にこだわると、いつでも商品を出せるわけではありません。都城の新茶もこの時期だけのものです。」といわれる。こうした地元産品へのこだわりが、道の駅を訪れるものにとっての大きな魅力であろう。

大隅、日南は従来の旧所名跡以外にも隠れた地域資源が豊かに存在している。それは日常の何気ない光景であり、その土地に愛着を持って住み続けている人々の日常の暮らしであるように思う。道の駅が核となってこうした資源を発掘し、情報発信をすることによって、従来型の観光ツアーとは異なる集客交流が可能になるはずである。今回の大隅、日南紀行は、過去の自分の痕跡と、新たな旅のスタイルを探す旅となった。

執筆者

未知倶楽部 志水武史

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