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未知倶楽部コラム

旅についての雑感

2006年11月13日

久しぶりに筆を執ります。
今回のテーマは旅です。

既に「道の駅ブランディングについて(その3)」にて、旅の妙味が非日常的空間との出会いにあり、地域にはそれを充たし得る充分なコンテンツが存在している、と述べましたが、本日は少々異なった角度からお話ししたいと思います。

先日、NHKの「クローズアップ現代」という番組を見ていたら、外国人の観光客を呼び込もうと尽力している観光地の取組み例が放映されておりました。

その中で印象的だったのが東京の下町である谷中の例です。
決して豪華ではない、普通のエコノミー旅館。ここの店主は「少しでも本当の日本の姿を外国人に理解して欲しい」という想いと、併せて「外国人を呼び入れることにより商店街の活性化を図りたい」という想いから、普通の宿を外国人に人気のある宿へと変貌させることに成功しています。外国人は日本に来て、何を求めているのか、何を知りたがっているのか。これについてこの主は良く理解しております。

コメンテーターとして出演していたピーター・フランクル(数学者)さんの話がまた‘旅’の本質を突いていました。ご自身が初めて来日したときは、取り立てて熱烈な日本ファンでもなければ、今のように日本語がペラペラでもありませんでした。この旅行が日本との最後の出会いとなるかもしれないと思いながら、生来好奇心が旺盛なフランクルさんは貪欲に街中を歩き出します。
日本人しか立ち寄らない居酒屋、普通の商店街。そこで見た普通の日本人の生活。これらの中から、ヨーロッパには存在しないような食材や料理、そして細やかな親切心を持つ人たちを見つけ出します。それ以降、彼は日本を離れても日本のことが片時も忘れられなくなり、そして今の定住に至ったそうです。

フランクルさんがおっしゃていたこと。それは先ず第一に、どんな良い景色、料理を食べてもそれだけでは忘れてしまうということ。でも人との出会いは忘れない。そしてその後もその人に会う為に、また訪れる。次はひょっとして自分一人ではなく家族とともに、あるいは友人とともに。
第二には、旅は思い出作りであるということ。親と訪れたこと、子供と訪れたこと。その時の色々なエピソード。勿論、その土地の人とのふれあいも。だからこそ、その土地の建造物等の思い出スポットは変わらないでいて欲しい。

私には6歳の娘がおります。子供は何も、旅に美味しい料理を期待したりはしません。娘が求めているのは思い出だと私は信じています。山形県飯豊の木工クラフト体験で作った掛け時計、新潟県赤倉高原で編んだアケビの壁掛け、千葉県丸山町で作った石鹸などなど……いずれも製作にはとても時間が掛かります。でもそのときの達成感、そして親子で格闘し地域の方に親切に教えて頂いた心の思い出を大切に、今でもそれらを家に飾っております。

このように旅とは、全ての人にとって‘思い出作り’であると考えております。日本人、外国人は関係ありません。

さて、来る12月4日に第4回目の道の駅価値創造セミナーを開催します。 一生忘れらない思い出作りの‘場’としての道の駅に秘められた可能性について、色々な角度より論じたいと思います。

是非、ご参加ください。お待ちしております。
執筆者

未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹

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