エコステ研究会員の取り組み〜湖北みずどりステーション編〜
2012年07月27日
湖北町は琵琶湖の北東部にあり、福井、岐阜との県境に近い。琵琶湖が東側にもっとも張り出したあたりが長浜であり、そのすぐ北が湖北だ。平らな地形に水田が続くが東側には山が連なる。気候は北陸に似て雪が深いという。
琵琶湖東岸の要路で戦国武将・浅井長政の小谷城跡がありNHK大河ドラマ「江」の舞台としても観光名所となっている。
今回は米原駅から北陸本線に乗り換え河毛駅に降りた。他に乗降客はなし。
無人の小さな駅には「ようこそ水鳥の楽園へ」という看板があった。駅前にも商店などはなく、通勤客用の広い駐車場があるが行きかう車もあまりない。足が無い。「まいったな」とつぶやきつつ駅の反対側に回ると一日に数便しかないコミュニティバス(8人乗りワゴン車)が停まっていた。
バスは集落の中を縫うように走り途中二人の老女が乗り降りした。蔵や離れのある立派な屋敷が多く、往時の豊かさを偲ばせる。 黄緑色の美しい田んぼではアオサギがゆっくりと歩いている。20分ほどで道の駅に到着した。
敷地は南北に長細く、西側が琵琶湖とその周回道路に面している。建物は西に向って南北に立っており、北半分はレストラン、南半分は農産物直売所である。一階からは見えないが、中央の二階部分からは琵琶湖が見渡せる。北側の隣地には環境省が管理する「琵琶湖水鳥・湿地センター」と長浜市が管理する「湖北野鳥センター」が並んでいる。目の前の琵琶湖にはヨシ原が茂り、センターからは季節になるとコハクチョウ、オオヒシクイ、カイツブリなどの水鳥を望遠鏡や双眼鏡で間近にじっくりと観察することができる。まさに湖畔の特等席だ。とてもフレンドリーな職員が親切に教えてくれる。
当道の駅にはこうした野鳥の観察や撮影をする人々、琵琶湖に沈む夕日を撮影する写真ファン、さらには湖周道路を走る自転車やオートバイのファンなどが集まってくる。また、直売所の新鮮な野菜を目当てにする地元客も多く、レストランもおいしいと評判で平日の昼でも満席状況であった。
道の駅の駅長・支配人の中でもおそらく最年少の一人である田邉理人支配人にお話を聞いた。
──環境に配慮した取り組みは行っていますか?
──急速充電器にご興味があるそうですね?
前回の未知倶楽部のセミナーの帰りに東京モーターショーに寄ったんです。そしたら各社とも電気自動車ばっかりで、これからはこっちに行くんやなぁ、と思いました。
──急速充電器の設置に動きましたか?
国から補助金が出るということやったんで、市も検討したようですが、ここの場合は琵琶湖国定公園の中にあるんで(施設に変更を加える場合は)認可に半年かかるんです。国定公園内は景観保護のために外観の色まで細かく指定があるぐらいですから。そやから申請するにしても補助金の期間に間に合わへんいうことで、県も市もあきらめたんですわ。関西電力なんかがアイミーブを使ってるんで、結構電気自動車は来るんですけどね。
──太陽光発電についてはいかがですか?
うちの場合は水道光熱費も自分とこで負担してますし、興味はあるんですが、冬に雪が多いからメリット少ないんとちゃうかと言われてます。あまり正確な情報が無いという面もあります。これもやるとなったら構造変更申請が大変です。補助金を利用するとなるとさらに手続が大変です。長浜市の環境保全課が隣りの湖北野鳥センターも管理してるんでこの辺一帯でうまく考えられたらええんですけど。
──無水エコトイレについてはいかがですか?
節水は大切ですし緊急対応も必要です。さらに水道光熱費が軽減され投資回収できるのが大きいです。現在のトイレは10年ほどたっており、老朽化が気になっています。ウリマットはヨーロッパらしくデザインも優れていて是非前向きに検討したいと思います。
──道の駅エコステーション化を進める上で必要なことは何でしょうか?
元々この建物は農水の補助金で作られてまして、そやから少しいじるのでも県と近畿農政局に構造変更申請が大変なんです。
──電力の全量買い取り制度なども始まっており、補助金頼みではないビジネスベースのスキームで思い切った手を打ってエコステーション化できたらいいですね。
今年のセミナーも楽しみにしてます。年に一度の東京での情報収集のチャンスですから。未知倶楽部さんには色々と教えてもらって今後の経営の参考にさせてもらえたらと思ってます。
──ありがとうございました。
【雑感】
ロードレーサー(自転車)の利用者も非常に多く、エコ意識の高い人が集まるのに格好のロケーションだ。日本を代表する湖だけに、野鳥ステーションと合わせて民間のノウハウを導入すればヨーロッパからでも人を呼べるような魅力的なエコステーションになる。大飯原発で揺れる関西電力管内でもあり、持続可能で自己完結的なエネルギー管理のモデルケースとしてもふさわしい。非常に大きなポテンシャルを感じた。
執筆者
未知倶楽部事務局 取材:2012年7月23日