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道の駅三芳村 鄙(ひな)の里(千葉県南房総市川田) ホームページ

農業立村のコンシェルジュ役を全うする、モデルケース的道の駅

地域のコンセプトを共有、道の駅の店作りに生かす

道の駅三芳村 鄙の里
道の駅三芳村 鄙の里

 「道の駅三芳村 鄙(ひな)の里」のある県道88号線は、幹線道路ではなく車の通りもそれほど多くはない。その上、筆者が訪問した日は平日、3月後半にしては凍てつくような天気。そんな日にも関わらず、この道の駅には多くのお客さんがいる。駐車場には地元だけでなく、遠方からのナンバーも見受けられる。
 道の駅を一回りしてみれば、その理由もうなずける。一言でいうと、道の駅として良くできているのだ。道の駅のハード、商品、サービス、どれを取っても一本筋が通っていて、かつバランスがいい。明確なコンセプトをもって場所作りがなされているのがよくわかる。そのコンセプトとは、「三芳のすばらしさを人に伝える」ことだといえる。
 「鄙の里」の周辺には美しい田園風景が広がっている。いわゆる『里山』と呼ぶにふさわしい日本の懐かしい風景だ。実は三芳村は、人口4000人ほどの小さな村であったにもかかわらず、農業においては全国的に有名なところでで、古い時期から有機農業の実践も含む先進的な取り組みを行ってきた生産者やそのグループが多く存在する。その代表的なものが「三芳村生産グループ」で、共同出荷などの有機農業生産活動を70年代から都心の消費者グループと連携して実践してきた歴史を持つ。オープンな土地柄からか、他所からの新規就農者の受け入れなども活発に行ってきた結果、農業と言えば高齢者という時代にもかかわらず、多くの若い農家がこの地域で自立した農業にいそしんでいるという。
 『鄙の里』はこうした意欲的な事業者の生産物や製品を販売するだけでなく、レストランや売店でも地元産の食材を使うほか、多くのイベントを開催するなど、まさに未知倶楽部が考える「地域のコンシェルジュ」としての役割を十二分に果たしているのだ。

酪農発祥の地にふさわしい、道の駅オリジナルの乳製品ブランド

「鄙の里」では乳製品として、牛乳、ヨーグルトアイスクリーム、乳酸菌飲料を製造販売している。
「鄙の里」では乳製品として、牛乳、ヨーグルトアイスクリーム、乳酸菌飲料を製造販売している。

 その典型的な例が地元産の牛乳を使った乳製品の販売であろう。『鄙の里』には隣接して乳製品の製造工場がある。これは『鄙の里』を運営する株式会社鄙の里乳製品部が運営しているもので、使っているのは地元の酪農家、安藤正人さんが供給する牛乳だ。安藤正人さんの生産する生乳は、平成20年度千葉県酪農農業協同組合連合会主催の品評会において知事賞を受賞している。この高品質な牛乳、それも当日の朝に絞られたものだけを使った牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなどの乳製品はこの道の駅オリジナルの大人気商品で、「鄙の里」の売上高の約半分をこの乳製品の売り上げが占める(南房総市発表平成21年度上半期決算書による)。『鄙の里』が位置するこの南房総地区は日本の酪農発祥の地であり、その意味でもこの事業の成功はまさに酪農本家の面目躍如と言えよう。

有機農業のメッカ、三芳村の誇りを示す生産物直売所

生産物直在所『土のめぐみ館』店内
生産物直在所『土のめぐみ館』店内

 そして生産物直売所も農業立村を実践してきた三芳村の誇りを存分に示している。この生産物直売所は三芳村周辺の農家が会員となっている農事組合法人「土のめぐみ館」の運営で、設立は昭和63年、南房総地域で最初の産直だ。『鄙の里』の道の駅登録が平成5年であるから、『鄙の里』はこの産直が元になったと言えるかもしれない。60人から始まった『土のめぐみ館』の会員も現在では軽く100人を超え、多くの種類の新鮮な農産物をリーズナブルな価格で購入することができる。また何よりこの地区が誇る有機栽培、低農薬栽培の生産物が数多いのもこの産直の大きな特徴であろう。
 この地区のブランド米である『蛍まい』もその一つ。蛍舞う初夏の農村という美しい風景を当たり前のものとして残すには、安心して食べられるおいしいお米づくりという当たり前のことを続けていこうと、若手を中心とした有志が集まり研究会を立ち上げて始まった米作りだ。現在、無農薬米と低農薬米のコシヒカリとヒトメボレを生産している。道の駅での直売のほか、インターネットなどを通じて、通品販売も行っている。

行列のできるハンバーガー

ビンゴ自慢の『スーパーバーガー』。180グラムのパテを2枚使用する超ど級のハンバーガー。1200円。
「ビンゴ自慢の『スーパーバーガー』。180グラムのパテを2枚使用する超ど級のハンバーガー。1200円。

 もう一つ、この『鄙の里』のバランスの良さを示しているのが、屋外の県道に面して位置する『屋台』であろう。この『屋台』の店舗名は「BINGO」。テイクアウトのハンバーガーショップである。別に道の駅にハンバーガーの屋台があっても、それ自体何驚くことでもなんでもないが、この店のハンバーガーは抜群においしい。その上メニューも、オリジナルのビンゴバーガーから、テリヤキ、ハラペーニョなどバーガー類だけで6種類。ローストビーフサンドやカツサンドなどの、サンドイッチ類を充実している。ハンバーガーのパテは和牛100%でその量180グラム。野菜はもちろん地元産の新鮮なものを使用。東京のこだわったハンバーガー屋と比べても全く遜色はない。むしろオリジナルのビンゴバーガーが750円と、コストパフォーマンス的には遥かに上かもしれない。それほどクォリティが高いハンバーガーを提供しているのであるから、週末にはこの店のハンバーガーを求めて昼前から長い行列ができるというのもうなずける。

 「鄙の里」のレストランでは麺類を中心とした軽食を供するほか、手作りのクッキーやケーキを販売するなど、やはりオリジナリティにこだわっている。また物産館の中心には、調理器や洗い場を組み込んだカウンターがあり、ここでは毎週末に地元の生産物を使った料理イベントを開催しているほか、季節ごとに地元と連携した祭事を数多く行っている。  ホームページを見ても、『鄙の里』の事業だけでなく三芳村周辺の生産者、事業者を広く紹介し、またそうした事業者と道の駅が連携するような取り組みがこの記事で記したように継続的に実施されることで、この道の駅のクォリティは高く保たれ、また駅としての魅力も存分に発揮できているのであろう。  意識の高い地元事業者と連携し、『地域のコンシェルジュ』役を全うするために道の駅自体の品質も最高に保つ。基本中の基本であるが、これこそまさに全国道の駅のお手本となる事業運営方針と言えよう。


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