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道の駅おがわまち(埼玉県比企郡小川町) ホームページ

和紙という地域の伝統技術を道の駅に生かす。

埼玉伝統工芸会館として設立

道の駅おがわまち
道の駅おがわまちの埼玉伝統工芸会館の建物

東松山ICから国道254号線を北西にしばらく行くと、旧254号線と二股に分かれる。旧道に左折し2,3分で左側に道の駅おがわまちが見えてくる。
この道の駅は、県内ではむしろ埼玉伝統工芸会館として有名だ。道の駅としての登録は平成5年で、県内ではあらかわに次いで2番目の早さだが、それはむしろ伝統工芸会館として駐車場やトイレ、休憩場が完備していたので、そのまま登録できたからという。
伝統工芸会館としては平成2年に小川町が建設し、運営は埼玉伝統工芸協会という財団を小川町長が理事長となって設立し行っている。今では年間5万人の来場者があり、特に県内の小学生にとっては一度は学校で訪れるところなので、埼玉県人には道の駅というより伝統工芸会館の方が馴染みが深い。
小川町は最近では勇気栽培農業への積極的な取り組みで有名になりつつあるが、昔から和紙の製造が盛んで腕のいい職人がたくさん集まっていた町だ。戦後徐々に和紙産業は廃れてしまったが、その伝統を復活させ後世に伝えるとともに、街の活性化に繋げたいという思いで、この伝統工芸会館も作られた。
伝統工芸会館には、小川町の和紙だけでなく埼玉県指定の伝統的手工芸品30品目がすべて展示されている。またギャラリーや企画展示コーナーでは、年間を通して様々なテーマで期間限定の展示が行われている。

道の駅の施設としては、この伝統工芸会館のほかに、『工芸の里』物産館があり、物産館の奥には手打ちそばを供するレストランスペースがある。レストランスペースの一部は小川町の野菜や米などを販売するコーナーになっていて、そこではNHKの『プロフェッショナル』にも出演した有機栽培で有名な金子美登(よしのり)さんとそのお仲間たちが育てた野菜なども販売されている。金子さんの野菜が食べてみたいという向きには、ここの販売所は要チェックポイントだろう。

一般的体験施設とは一線を画する『和紙工房』

和紙工房の青木恵子さんと熊野葉子さん。中央は道の駅おがわまち広報担当の田嶋○○さん
和紙工房の青木桂子さん(左)と隈井葉子さん(中央)。右はの駅おがわまち広報担当の田嶋さん

道の駅「おがわまち」で注目に値するのが、小川町の伝統工芸、和紙作りを体験できる『和紙工房』である。この『和紙工房』は伝統工芸会館内にあり、来場者はここで小川町伝統の和紙作りを見学体験することができる。

小川町で作られている紙の中心となるのは、『細川紙』と呼ばれていて、楮(こうぞ)という木を原料に、つなぎとなるトロロアオイという野草の根の抽出物を混ぜて作るもので、古くは和歌山県の細川という村で作られていたとのことだ。それが小川町に伝わったのは、江戸幕府が元々製紙が盛んであった小川町一帯を江戸への良質な和紙の供給元とするために、この細川紙の技術を技術移転したものらしい。この辺りに良質な楮やトロロアオイが多かったのも理由の一つらしい。『細川紙』はとても強く耐久性のある紙で、障子や襖などによく使われてきたとのことで、それを聞くと江戸の近くに供給地を欲したこともうなずける。
 今では細川紙は国の重要無形文化財に指定されており、この工房にもその技術を持つ和紙職人が常駐し体験希望者に対応するほか、細川紙を全国に製造出荷もしている。厚さなどを指定した注文にも応じ、京都の建具屋から非常に薄い紙の注文が入ることも多い。

 筆者が訪れた日は、お二人の女性職人が細川紙の作り方を説明してくれた。隈井葉子さんと青木恵子さんは、二人とも和紙作りの家に生まれ、子供の頃から紙を漉いてきたそうだが、今はどちらも廃業して、この工房でだけ紙漉きを続けている。大変丁寧に細川紙作り工程を教えていただき感謝するとともに、細川紙作りの大変さとお二人を含めた小川町の和紙職人の技術の高さ、そしてその高い品質に驚かされた。

地域の技術を魅力的な観光商品に

和紙工房では、各種の和紙製品も販売している
和紙工房では、各種の和紙製品も
販売している。

 小川町の紙作りは、一時はすっかり廃れてしまったそうだが、まだまだこの『和紙工房』のお二人のような職人が健在であり、近年他所から紙作りを志す若者も移住してきたりと徐々に盛り上がりを見せている。また小川町にはここ以外に本格的に和紙作りを体験学習できる、『和紙体験学習センター』もあり、数日間かけて『細川紙』の製作を一から学ぶこともできる。
 こうした環境において、小川町の和紙作りという日本古来の、また現代にも通ずる職人芸をフィーチャーした着地型観光の取り組みには、大きな可能性があると思われる。既に小川町では、この『和紙工房』を含め和紙作りを地域活性の要と位置づけて数々の取り組みを行っている。未知倶楽部でもこのような日本に残るすばらしい地域の伝統技術を現代に生かす事業化を、道の駅ネットワークを通じて提案していきたい。


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