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道の駅はなぞの(埼玉県深谷市小前田458-1) 詳細 ホームページ

地元企業、JAとの強固な連携による道の駅の魅力作り

『街の活性化と農業振興の拠点』が基本目標

道の駅はなぞの

関越自動車道の花園インターをおりて、国道140号線に入りしばらく車を走らせると、右側に道の駅はなぞのが見えてくる。手前にあるJA花園、そして道の駅本体ともいえる地域物産館『アルエット』、その先には「ひだまり公園」が隣接し、JA花園の裏に位置する「花園ふれあい市民農園」も含めて総面積は5.87ヘクタールという大型道の駅だ。道の駅はなぞのは、旧花園町、花園町商工会、JA花園の三者の出資による三セク、(有)はなぞのの指定管理による運営で、現在は合併により花園町に代わり深谷市が経営に参加している。出資比率は市が80%、商工会とJAが10%ずつとなっており、矢田久夫支配人はじめ社員は4人、平成10年度の設立時は一名が旧花園町からの出向であった。
秩父と長瀞渓谷の入口に位置し、年間を通して多くの観光客が訪れるこの道の駅は、年間来客数が90万人弱あり、そのうち約20万人が地域物産館、残りの約70万人が農産物直売所のもの。
これに対応する駐車場も、普通車562台、大型車42台分を確保している。
運営基本目標には『街の活性化と農業振興の拠点』とあり、明確に農業を主体とする経営ポリシーがうたわれているのがこの道の駅の特徴だ。

地元企業との連携が作り出した販売力のある商品構成

地域物産館『アルエット』は、花園のイメージを表す花時計の奥に位置するヨーロッパ調の建物。2階建ての館内は、1階が物産の販売と地元の祭り屋台の展示室、2階がギャラリーと会議室になっている。2階は以前レストランであったが、現在は飲食の営業は止めているとのこと。1階に展示されている屋台は、秩父の祭り屋台とともに有名な小前田の屋台祭りに使われるもので明治時代の建造。この屋台が物産館のいいアクセントになっている。
取材に対応いただいたのは副支配人の岡田早苗さん。多く訪れる観光客をターゲットに、物産館の品揃えは、地元の産品を使い地場の企業と一緒に作り上げたオリジナリティの高い商品を取り揃えているとのこと。そのうちのいくつかを紹介しよう。

まんじゅう

まんじゅう
花園では各種まんじゅうを販売しており、人気商品となっている。特に炭酸まんじゅうは、1日に何度も業者が商品を補充しなければならないほどの人気商品とのことであったが、取材時は売り切れ中。この日あったのは『はなぞのまんじゅう』という名前の商品で、紫芋を練り込んだあんが入ったまんじゅうで、しっとりとした皮と甘さ控えめなあんがおいしい。

地元養蜂業者による蜂蜜商品

地元養蜂業者による蜂蜜商品
地元の花園養蜂場は、国産、天然、無加工にこだわる蜂蜜業者で、道の駅はなぞのをメインの販売ルートとして製品を出荷している。自社HPでも販売先として道の駅が紹介されている。物産館内でも入り口近くの目立つ場所に蜜箱の展示と一緒に商品が置かれている。アカシアやリンゴ、みかん、そばなど、蜂蜜の種類は10種類以上。アカシア蜂蜜の採取地は荒川河川敷、クローバーは利根川河川敷と地元感も満載である。変わり種としては、蜂蜜にスズメバチをつけ込んだ『スズメ蜂はちみつ漬け』。蜂蜜の中に巨大なスズメ蜂がごろごろつけ込んである。
その他にも巣の形そのままに取り出した『巣みつ』、蜂蜜が結晶化した『けっしょう蜂蜜』など、多彩な商品構成で販売力を向上させている。

花園黒豚

花園黒豚
花園は実は黒豚の産地でもあり、『花園黒豚』という銘柄豚がある。イギリス原産のバークシャー種を4代にわたって生産しているのは黒豚の中でもこの花園黒豚だけとのことだ。この黒豚を使った商品も人気となっている。写真は黒豚コロッケとメンチカツ。

秩父錦ほかの清酒

秩父錦ほかの清酒
秩父錦をはじめ地元の蔵本の清酒もそろっている。秩父錦の季節限定龜口酒は、新聞紙を使った包装が秀逸。味もすっきりときれがいい。この秩父錦の酒粕も大人気で、月に1000個売れるとのこと。高年齢層向けの人気商品。

「季市」

「季市」
「季市」は切り干し大根のニンニクしょうゆ漬け。地元産の大根を一本一本手でちぎり、山から吹き降りる秩父おろしにさらしてできた最高の切干しを、ニンニク、赤唐辛子と秘伝のたれに漬け込み、2か月間熟成されたもの。「つるや」という地元企業の製品で、やはり販路として道の駅はなぞのがメイン販路となって販売している。ニンニク醤油の風味と強い辛みが癖になる味。ご飯にも、酒のつまみにも合う。取材中にも飛ぶように売れていて、中には10個近く買っている初老の男性の姿もあった。

立地を効率よく利用し、農産物直売の成果を上げる

農産物直売所

道の駅はなぞののおおきな戦力となっているのが、JA花園が運営する農産物直売所だ。ここはJA花園の本体でもあり、野菜から花卉までよく管理された環境で数多くの産品が販売されている。野菜の直売店舗面積が約130坪。別棟で花卉の温室もあり、こちらが約200坪の店舗面積になっている。ここの産直は開設が昭和58年と古く、東京に近い立地を利用して意欲的な運営がなされてきた。道の駅の開設もその一環といえる。
年間の利用者は前述のとおり約70万人。直売所の店頭には、地元産の野菜が目立つようにに並べられているほか、訪問時が午後であったにもかかわらず種類、量も豊富で、常に欠品が出ないよう商品が補充されていることが見えて取れた。また東京の大型流通が朝採れ野菜としてここから毎朝野菜を仕入れているという話も聞いたが、大型消費地に近い立地を最大限利用して成果を上げていると言える。
商品は農家からの委託のほか、JA仕入れ品も多く揃え、特に米は花園産のキヌヒカリが米の総販売の7割を数えるなど、JAにとって地元産品の重要な販売拠点と位置づけられ、販売施策が取られていることが伺える。
こうした産直の長い経験とノウハウを持つJAの存在は、道の駅での産直を考えるうえで当然重要なポイントとなる。昨今の道の駅は、どこも多かれ少なかれ直売所や産直コーナーを持つところが増えているが、現在の産直ブームでJAだけでなく民間事業者の産直参入も増えており、地元産の野菜をただ販売するだけでは競合他社との差別化を図れず、道の駅のハードとしての優位点をみすみす浪費することになりかねない。そうならないためにも道の駅は、それぞれの立地、客層を考慮して、地域の魅力発信基地という認識のもとに産直運営の方法を探る必要があるのではないか。「道の駅はなぞの」のような『農業』を核としてJAと複合的かつ強力に連携を進めていくことはその一つの答えといえよう。

体験農園が道の駅のファンを作る

「花園ふれあい農園」

JAとの連携のもう一つの好例として、道の駅の奥に位置する「花園ふれあい農園」がある。『ふれあい農園』の運営は深谷市であり、直接JAは関与していないが、隣がJAという立地で、畑作りに必要な、種、苗などの園芸資材をすぐに入手することもでき、またその都度アドバイスももらえる。利用者は年間登録で野菜作りを楽しむことができるようになっており、現在の利用者は区画数一杯の191名である。毎年申し込みはすぐ締め切りになるそうだ。
『ふれあい農園』には畑仕事に必要な道具は耕耘機まですべてそろっており、野菜作りは常駐する2名の指導員が手取り足取り教えてくれる。この日、取材に応じてくれたのは、指導員のお一人松本初夫さん。もう一人とは日替わりで利用者の指導と農園の管理にあたっている。農園にはシャワーと着替え室、休憩所も完備。何も持たずにやってきても、1日野菜作りを楽しんで、農作業の汚れをシャワーで落とし家路につくことができる。
また農園には、テーブル・ベンチがおかれた『ふれあい広場』もあり、農作業の合間にくつろいだり、ピクニック気分でお弁当を広げたりもできる。その隣にはぶどう園が併設され、ここでの収穫は道の駅で販売される。
これで年間利用料は1区画1万2000円と聞けば、毎年申し込みがすぐ埋まってしまうのもうなずける。利用者は市外からが3分の2以上で、遠くは川崎からわざわざ通ってくる人もいるとのこと。東京などの都会と近い立地を利用して、こうしたリピーターを創出する仕組みを持つことも、道の駅を核とした地域ビジネスの大きな可能性を示している。

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