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未知倶楽部コラム

道の駅に期待される役割と現実

2006年8月9日

第18回駅長及び未知倶楽部のコラムを何度も読み返してしまいました。
道の駅管理運営に関わる者が持つ共通の課題であり、深い悩みでもあると思います。
私なりの考えを述べさせていただきますが、道の駅の役割や目的、設置・管理に関わる自治体等に対する批判をするものではありませんし、特定の駅や地域を指したものでもありません。
何よりも私自身が当事者でもありますので。くれぐれも誤解なきようお願いいたします。

道の駅は多くの顔を持っています。ドライバーの休憩施設や道路・観光情報の発信基地としての基本的役割は当然のことながら、地域振興への寄与、地域住民交流の場、特産品の広報宣伝(販売)・・・併設の施設や地域環境・産業構造によって「道の駅」のカラーも様々です。
このカラーを活かした「地域連携」のあり方に腐心し、「公的役割」に対する限界を感じつつも「赤字を出さない経営」を継続しなければならない・・・容易なことではありません。地方自治体破綻が現実となっている時代に、収支を考えずに施設の管理運営はできません。
単独収支を追求すると公的サービスの充実はできませんが、収支を無視しての存続もありません。公的役割や地域貢献を維持するには「たてまえ論」だけでなく維持コストの裏打ちが必要です。道の駅や付帯する施設は地域性なども考慮した個性的な建築物が多く、ドライバーの目を引きます。

この個性的な建物であるが故に維持管理には大きなコストが必要となります。照明器具にしても水銀灯やガス灯、多種多様な白熱灯にハロゲン灯・・・特殊なもの、高価なものも多く、ほとんどは街の電気屋さんで扱ってません。更に設置場所が高く天井が吹きぬけだったりすると、取り付けも業者に依頼(有料)しなければなりません。備品や内装でも特殊仕様のものが少なくないでしょう。
設計の段階では使い勝手や後々のメンテナンスコストまで考えられないようです。10年も経過すれば建築物そのものの傷みに加え、機器・什器類の耐用年数が一気に迫ります。店舗運営に携わる人であれば「業務用機器」がいかに高価なものであるかはご存知でしょう。ある程度順調に経営が推移していても、近い将来に必要となる何千万円もの補修資金まで準備できる余裕はありません。

事態を難しくする背景はまだあります。多くの道の駅や付帯施設の建設では様々な助成(補助)金を活用し自治体の負担軽減をはかっています。「道の駅」の管轄は国交省ですが、助成(補助)金の種類によっては複数省庁の影響下にも置かれることとなります。
管理維持コストの多くを入場料や商行為による利益に頼っているのが現実ですが、当初から「商業施設」対象の助成(補助)でない限り、商売優先・営利目的では"目的外運用"となるわけです。
この微妙な立場を意識しながらの営業では目立った動きが出来ず、守りの態勢となりがちです。
道の駅本来の公共性・利便性を保ちながら存続するためには、多くの費用がかかります。公共サービスも民間サービスも"タダ"ではできません。各地域で民間の効率的経営手法を取り入れる動きが活発になっていますが、「民間的」な手法に近づくことはできても、「民間」にはなれません。この差はとてつもなく大きいことだと思います。

地域連携については道の駅の生い立ちもかなり影響すると私は思っています。
従来からあった地域交流の場(施設)を道の駅として登録した場合。もう一方は道の駅登録と地域振興を目的として新たに施設を建設する場合です。前者は既に地域連携の仕組みが出来ているのに対し、後者は施設の状況(立地条件や設備等)に合わせた活用・連携を模索することになります。
地域経済や産業構造、計画段階からの住民意識、要望等の度合いにより、開設後の地域における連携や貢献のあり方も変わってくるのではないでしょうか。 地域住民による道の駅を活用した特産品販売が盛んですが、どこの駅でも"海産物・農産物の朝市"が成功するわけではなく、昔から全国に点在する歴史ある"朝市"にしても存続できた理由があるはずです。思いつきの「仕掛け」で存続出来るほど甘くはないと思っています。
行政サイドや道の駅の思いよりも、住民が"地域の駅"として意識しているかどうかが重要でしょう。

更に立ちはだかる大きな壁・・・北国では"半分がオフである"ことです。冬は畑、田んぼ、海さえも雪(流氷)に覆われ生産活動は休止状態。観光客の動きは特定の地域に留まり、多くの道の駅は"開店休業"状態になります。立ち寄る人はオンシーズンの1割にも満たなく、行き交う車も途切れがちになり、地域の動きそのものが鈍くなります。
北国であっても『活気のある道の駅』を夢見ていますが、現実は甘くないようです。
半年に満たないオンシーズンは維持経費を稼ぎ出すための"商売"に集中しなければならない期間であり、必死に特産品・土産品を販売し、食事を提供し、宿泊客獲得に走り回ることになります。冬でもそれなりに花や野菜が栽培できたり、漁ができる地域が羨ましくなることもあります。

これらの難問でいつも自問自答を繰り返します。俗な言い方になりますが、道の駅としての公的役割や期待されるサービス向上、地域への貢献・・・これは大変"金がかかる"ことです。
特産品の販売やホテル、レストランの営業・・・これで運営のための"金を稼ぐ"ことになります。
赤字になっても国や自治体が何とかしてくれる財政状況にはなく、営業を強化しなければ・・・
しかし管理運営を委託されているに過ぎない状況で、商売優先に傾斜するわけにもいかず・・・
堂々巡りの果てには、未知倶楽部室長のおっしゃる「道の駅とは何か」「地域にとって何なのか」の振り出しに戻ることになります。時間をかけてじっくり取り組むことであろうと思います。

道の駅同士の連携については、運営が市町村の直営(公社等含む)、第三セクター、NPOや各種組合、民間企業委託など様々で、現場責任者の立場も違う(公務員・民間人)ため難しい面もあります。
年一回の「道の駅連絡会」の会議は「管理者」である市町村の担当者が出席する行政側の打ち合わせ会議ですが、現場に常勤していてこそ理解し合える事例や工夫・改善策を本音で話せる場もあるといいですね。
「岐阜県東濃道の駅連合会」のように相互交流がうまくいっている地域もあるようですが、今後も多くの成功事例が『未知倶楽部』で紹介されることを期待しています。
何しろ、フォーラムに出かけるには遠いもので・・・

少々愚痴っぽく写る面があったかもしれませんが、何とか意を汲み取っていただければ幸いです。
様々な環境を一旦受け入れ、今後できることは何なのかをもう一度考える時期と思っています。
『活気ある道の駅は一日にして成らず』でしょうか。

執筆者

道の駅サロマ湖 杉本武雄

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