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着地型観光の推進と道の駅の役割(12月実施アンケート結果から)

観光のかたちが、団体から個人へかわり、有名観光地を「見る観光」から、地域の食や文化を訪ねて、「参加体験や地域との交流を楽しむ観光」に変化してきています。またマイカー利用の拡大や、高速道路料金の引き下げで、自動車を利用したドライブ観光が増加しつつあります。

これからは、都市部の旅行代理店が企画した観光商品にかわり、観光客を受け入れる地域が観光商品を企画して販売する「着地型観光」の時代になるといわれています。観光目的地に本拠地を置く人や組織が中心となって地域資源を活かした観光商品を企画し、事業としてマネジメントしていく方法が「着地型観光」です。

道の駅は地域の顔として、また交流の拠点として、道路利用者に支持されていますが、観光に積極的に取り組んでいるところはまだ少ない状況です。道の駅には、地域の特産品や食が揃っています。また、地域の観光施設や宿泊施設の情報を提供することができます。さらに、道の駅の駅長は、地域の人材や資源を最もよく知っています。このような状況から、道の駅は観光に取り組む潜在的な力を有しているといえます。

そこで、12月度は、道の駅が着地型観光の推進でどのような役割を果たすべきかについて、アンケート調査を実施致し、94箇所の道の駅から回答を寄せていただきました。

7割の道の駅が観光コーナーを持っている

94の道の駅のうち、約7割にあたる65件が観光コーナーを持っています。運営主体は「道の駅」が35件と半数以上を占め、次いで「観光協会」が23%にあたる15件でした。観光案内の担当者の有無を尋ねたところ、担当者を置いている道の駅は49件と約半数でした。一方、道の駅を核とした周遊マップなどは78%(73件)の駅で用意されていることがわかりました。観光コーナーや周遊マップはあるものの観光案内をする人手が足りてない実態がうかがえます。

道の駅を経由または目的とする観光事業に取り組んだことのある道の駅は1/3

これまで取り組んだことのある観光事業について回答をいただけたのは、全部で31件で、全体の約1/3と少数に留まりました。
取り組んだことのある観光事業は、道の駅をバスツアーの発着所や経由地として「食事や買い物の利用を取り込んだ」という趣旨の回答が多くを占めました。中には、道の駅でバスツアーの乗車予約を受け付ける、道の駅自らがコースを組んで旅行会社に提案する、という主体的な取り組みをおこなう道の駅もいくつかありました。
さらに、地域住民との協力により、道の駅および周辺での「体験プログラムを提供」している施設や、行政や同じ地域の道の駅と連携した「共同企画」で、地域全体への集客を図る試みも見られました。

今後取り組んでみたい観光事業は、農業体験、地場産業体験、地域の歴史と文化めぐり

今後取り組んでみたい観光事業に関しては、立地条件の悪さや観光資源の乏しさから「観光事業に取り組む予定はない」という回答が目立ちました。
しかし、回答の中には、農業を観光資源ととらえ、地域での「農業体験」に意欲を示す道の駅が多くありました。また、陶芸などを体験する「地場産業体験」、地域の歴史・文化施設と連携した「地域の歴史と文化めぐり」、海沿い地域では「アウトドア&スポーツ」があがった他、特別な観光資源がなくても実施できるものとして「ウォーキング、スタンプラリー」などがあげられました。

着地型観光のPRは旅行会社への提案からインターネットの活用へ

それぞれの道の駅が考えているPR方法としては、最初は販売チャネルを持っている「旅行会社への企画提案」が効果的な方法としてとらえられているようです。次いで、チラシやポスター、メディア利用などに加えて、消費者に直接情報を発信できる「インターネットの活用」が目立ちました。また、行政とタイアップして「地域の他団体との連携PR」していきたいという回答も多く寄せられました。

観光づくりは地域の多様な主体との連携から始める

観光に取り組めない理由として、観光資源がないことに続いて、人材がいない、予算がないが上げられました。しかし、道の駅の人材だけで観光事業に取り組むのではなく、地域住民と連携して、農業体験を提供したり、まち歩きガイドツアーに取り組んだり、利用客減少に悩む、地元バス会社や旅館ホテルと連携して実施するところもありました。このように、観光づくりは、地域の多様な主体と連携して、推進することができると考えます。

今回は、着地型観光の推進と道の駅の役割について検討してきました。道の駅は地域活性化の拠点として、観光の窓口になることが期待されています。そのため、道の駅は地域の多様な主体と連携して、地域の資源を改めて発掘・再評価するところからはじめるのがよいと思います。
「未知スタイル」の本編では、この紙面で紹介しきれなかった分析結果と、各地の事例を詳細に掲載しています。あわせてご覧ください。

執筆者

未知倶楽部 編集部

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