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未知倶楽部コラム

第6回 道の駅価値創造セミナー

12月8日 第6回道の駅価値創造セミナーが開催されました。その講演の要約をご報告致します。

今回は「道の駅の連合連携化」をテーマとして、2つの初めての試みも行いました。一つは初めて東京の会議場を飛び出して、道の駅どまんなかたぬま(栃木県佐野市)で行ったことです。もう一つは参加者の方々とディスカッション形式で意見を交換したことです。その結果いままで以上に参加者の心がひとつになった記念すべき会となりました。

未知倶楽部より

開会のご挨拶

先ずは会場をご提供頂いた道の駅どまんなかたぬまの篠原駅長様からの開会のご挨拶をいただきました。
道の駅 どまんなかたぬま (栃木県) 駅長 篠原 敏秀 氏
【内容】
  • 東京を離れての初めてのセミナーの場として選んで貰ったことを光栄に思う。
  • 旧田沼町は宗谷岬と佐田岬を結ぶと丁度まんなかにある。それによりどまんなか宣言をして道の駅の名前に取り入れた。
  • こういうセミナーを通じて益々発展することを祈る。

第1部 先進事例報告

1.東濃道の駅連合の取り組み
道の駅 土岐美濃焼街道 どんぶり会館 (岐阜) 駅長 丹羽 正孝 氏
道の駅 加子母 (岐阜) 駅長 安藤 直樹 氏
【連合の取り組み】
  • 10駅の連合を4年前に立ち上げて、いろいろな活動をしている。共同の道の駅物産展はほぼ毎月おこなっており、来年1月には岐阜県庁の中で行い職員の方に東濃地区の産品を周知しようと思っている。
  • 変わったところでは8月に加子母トマトの救済販売を行った。加子母地区特産のトマトが豊作で1つの駅だけではさばき切れず山に捨てているということを聞き、3駅がトマトの販売に協力した。これも道の駅の連携プレーの一事例だ。連合を地域連携に生かした加子母の事例を以下で報告する。
【連合に助けられた小さな道の駅、加子母】
  • 加子母は小さな道の駅だ。競合施設もあり、最初はすぐにつぶれるだろうと噂されていた。開業の活気がさめると地元の人にも観光客にも人気のない道の駅になってしまっていた。
  • それが連合のおかげで他の駅長との交流が広がり、情報交換、悩み相談、売り場づくり、スタッフの研修などいろんなアドバイスをそれぞれ得意な駅から受けられるようになった。
【交流で伸びた収益】
  • またこれまで廃棄していた地域の農産物を連合の他の駅でさばいてもらえた結果、トマトの販路が広がり、農産者にとっても私たちにとっても、他の道の駅にとってもよいという結果になった。
  • 未知倶楽部で全国の道の駅との産品交流を始め、商品やイベントを通じて各地の文化を伝える取り組みを始めたところ、これまで来場しなかったような主婦や若い層も興味を持ってくれた。地元の農家との交流も増えて野菜を売らせてもらえるようになった。
  • こうした取り組みの結果、3年目には数字も伴ってきた。小さな道の駅でも連合に助けてもらうことでここまでできるのだということを皆さんにも知ってもらいたい。

2.津軽半島道の駅の会の取り組み
道の駅 浅虫温泉 ゆ〜さ浅虫 (青森) 駅長 細井 仁 氏
【新幹線がきっかけで連合】
  • 青森県津軽半島の9駅で構成。未知倶楽部と青森県の指導のもとに昨年9月に結成した。背景は2010年に東北新幹線が青森駅まで開通すること。素通りされないよう経済基盤を作りたいという思いで広域連携をすることとなった。
  • 連合の経費は各駅の自助努力で力に応じて負担している。
【大きく意識が変わった】
  • それまではどちらかというとライバル視していた駅同士が連合によって情報共有を進め、協力し合うようになった。ブドウやリンゴが天候被害に合ったときも傷んだ品を説明しながら共同で販売した。合同販売会も各地を移動しながら行っている。
  • 今は新幹線開通に向けてオリジナルの土産品を作ろうということで、共同商品開発を行っているが、各駅の地域の特産品を入れて、食品工場を持つ道の駅で試作するという形で、自分たちの力で行っている。
  • 少しでも長く津軽ですごしていただくべく、共同で地域の観光資源の発掘も行っている。連合ができたことで、各道の駅のグレードアップができつつある。
【連合と連合の姉妹提携】
  • 会をつくるにあたってモデルにした東濃の連合とは姉妹提携を結んだ。両地域の駅長たちが相互に訪問し合った。道の駅の連合同士の提携というのは全国でも初めてということで各方面から反響があった。
  • 今後は地区の連合が増えて行き、全国連合をつくって、視察や交流会ができればすばらしいものになると思う。是非皆さんにも各地で足元を固めて頂きたい。

3.栃木県道の駅連絡協議会の取り組み
道の駅 もてぎ (栃木) 大坪 崇 氏
【概要】
  • 栃木県内の15の道の駅の連絡協議会は平成16年に発足した。会場持ち回りで年に4回の情報交換会を軸に活動している。
【共通商品の開発】
  • 道の駅限定の商品を作ることで付加価値を高め、協議会の運営費を得るためにも共通商品の開発を行った。
  • 第一弾は特産のイチゴを使った4種類7品目がある。箱には15駅の紹介を掲載している。販売は順調だ。第二弾はやはり特産のブルーベリーを使った手作りにこだわった商品をつくった。
【研修会の開催】
  • 色彩効果、接客技術、管理職の経営相談など様々な研修を行ってきた。参加者は増えて今では県内3箇所で行い、140人以上が参加している。
【今後の課題】
  • 協議会のホームページの充実を図りたい。
  • ハートフルトイレの登録は現在10駅が終えており、全駅の登録を目指している。
  • 共同イベントでの集客を行っていきたい。
【成功の秘訣】
  • 栃木県の道の駅は和気藹々として仲がよいといわれる。成功の秘訣は事務局の中小企業団体中央会の努力と、個性的な駅長たちの魅力にある。
  • 道の駅ごとに事情は異なるので、心がけていることは、それぞれの道の駅を尊重する、情報交換し良いことはどんどん取り入れていく、いい意味での競争をしていく、の3つである。

第2部 ディスカッション 道の駅の連合連携化と次のステップ

伊藤忠商事株式会社 未知倶楽部室 賦勺尚樹

未知倶楽部発足から5年間道の駅を見続けて来た。連合連携化がいくつかできてきたところで、今一度「道の駅とはそもそも何なんだろうか」ということを掘り下げて考えなければいけないと思う。

【道の駅の現状】
  • 地方財政が逼迫する中でも道の駅は増えてきているが、補助金の削減と消費の低迷で経営環境はかなり厳しくなってきている。歳出削減のため次々と指定管理者制度が導入されている。道の駅の質のバラつきは進んでいるし、勝ち組と負け組みができてきている。
  • 道の駅は集客力のある立地だ。地域内外の人が効果的に交流でき、観光、歴史、特産品、歴史が集積できる戦略性に富む場だ。公共施設だからこそ信頼性も高い。
  • しかしながら道の駅のブランドというものは確立されていない。道の駅だからこそいいものがある、信頼できるというところまでいっていない。道の駅側も共有ブランドとしての意識は高くない。
  • 道の駅の関係者は、がんばっているのに自治体から正当に評価されず、支援もされていないという孤立感を持っている。
【公益と「地域連結利益」の考え方】
  • 道の駅は単体での利益ではなく、地域経済に対して利益を還元し、「地域全体の連結での利益」を見るべきだ。
  • 指定管理者制度ではそれまでよりも収支を改善しなければいけない。「利益至上主義」が強くなりすぎているのではないか。
【道の駅ブランドコンセプトの共有】
  • 道の駅というのは地域のネットワークを活用して魅力的な資源、自然、文化、技能、産物、人、が集積している場である。訪問者は地域の玄関とも言うべき道の駅を訪れて、地域の魅力の一片に触れて、ここから周辺のリアルな魅力的スポットへ周遊拡散する。特産品一つも単なる商品ではなくて地域のかけがえのない誇りとして扱う事が必要である。
  • 訪れる人々は都会でのぎすぎすした生活から離れ、非日常的な世界と出会いたいと考えている。単純な田舎の風景というのではなく、「日本のふるさととの出会いの場」、というブランドコンセプトをすべてに透徹させて攻めて行くべきである。
【相互扶助の精神】
  • 道の駅は単独で利用者に訴求するものではなくて、全体として道の駅のブランドイメージを念頭において、ブロック内外の道の駅同士が連携し相互に価値を向上させる仕組みを作るべきだ。産品交流、共同イベント、道の駅めぐりなどだ。他の道の駅のためにすることがいつかは自分のためになるという「相互扶助の精神」が大切だ。
【自立的な道の駅連合の必要性】
  • 全国的にみると、道の駅連絡会はあるが、本日の事例で紹介されたような連合はまだ他には無い。連合は自分たちの意思で作ったものであり、上から与えられた連絡会とは性質が異なる。自分たちの問題意識があり、解決のために連合を作っている。道の駅ブランドの共有はおろか、連合すらなかなかできず、勝ち組負け組みができている状況では、今後道の駅が増えても道の駅の価値を守っていくことは困難だ。
道の駅意見1
  • 北陸には連絡会があるが活動は活発ではない。情報交換の場がなく、目標を見定めることができない。最近は市民の行政に対するコスト意識も厳しく、儲けなければいけないということが頭を離れない。しかし理想は「訪れる人がほっとするようなゆとりのある場所」だ。しかし理想論ではつぶれてしまう。
道の駅意見2
  • 九州でも指定管理者制度が導入されていて、来年4月には多くが更新時期を向える。様々な業種から参入されて利益至上主義に走ることを危惧する。行政として業者に守らせる運営コンセプトの目安が今後は必要になるだろう。
道の駅意見3
  • 我々は民間企業の指定管理者である。公共性や設置目的、地域雇用などを崩さないことを明確に約束して受託している。利益と相反する制約も多いが、公共施設だからこそエコ活動などをするとメディアに取り上げられやすいというメリットもあり、利益至上主義に走ることなく上手く経営できていると思う。行政側も徐々に柔軟になっているところもある。但し3年契約では長期的な投資や開発がしにくいので5年は必要だ。
道の駅意見4
  • 未知倶楽部から連合化を奨められていたがなかなかできず、ようやく半年前に6駅で連合した。年6回の駅長会議を開き、共同でイベント開催、研修、物産の交換などを行い始めた。お陰で言いたいことを忌憚なく言い合えるような仲になりつつある。今後はお土産品の共同開発をしたい。
  • 当駅には温泉施設もあり、地域の人々の健康福祉にも役立っている。地域の生産者とも密接に取り組んでいる。
  • 当社は90%が自治体資本の株式会社で、指定管理者として受託している。国や自治体の施設設備の管理もしているが、費用は一切もらっておらず、当社の収益の中でまかなっている。その代わり裁量の範囲を確保している。利益がでれば従業員にも賞与として配分し、成果報酬的な仕組みも入れてモチベーションを高く保って運営している。
道の駅意見5
  • 私たちの県(東北)では道の駅利用推進協議会があるがあまり進んでいない。最近は駅長会議でも利益至上主義が随分強いような気がする。私としては安心して立ち寄って頂けるよう、お客様の立場に立ってやっていくことが大切で、その結果として利益につながるのではないかと思っている。
道の駅意見6
  • 私たちの連合は、広域から集客するために複数の駅を回遊してエリアを楽しんで頂けるようにすることを目的の一つとしている。
  • 連合は、難しいことを考えずまずつくるのがよい。そして関係者が交流を深め、共同で出張販売などを行うことだ。するとお互いの事がよくわかるようになる。それからいろいろと考えればよい。
  • 産品交流は、地域の人のために街道文化の宿場町として外の情報を提供するという趣旨でやっている。利益至上主義ということではなく、地域の人々に喜んでもらうためにしている。県外の商品を売っていることを不思議に思う人もいるが、趣旨を説明するとそれでこそ道の駅だと言われる。
道の駅意見7
  • 中国、四国地方は連合連携化が進んでいない。当駅は第1回の価値創造セミナーから参加して産品交流もしておりうまく行っているが、地区の連合ができていないのが悩みだ。
  • 道の駅の3つの基本機能として、「情報発信」、「休憩」、「地域との連携」とある。3つめの意味がわからなかったが未知倶楽部に参加してよくわかった。自分だけ何かを得たらすぐ引っ込んでしまうという蛸壺連携は真の連携ではない。意識を変えなければいけない。連絡会はあるが会費を納めるだけの会になってしまっている。
  • 道の駅は設立時の登録要綱に書かれた事をきっちり守って運営しなければならない。
  • 指定管理者制度については、市町村合併で駅の設立コンセプトが引き継がれていない場合がある。
  • 道の駅が目指す姿というものが共有されていなければならない。
道の駅意見8
  • 当駅では地域連携ということで下火になってしまった地元の温泉街の活性化にも協力している。温泉活性化協議会を作り、観光協会や行政と連絡しあいながら祭りなどを開催している。
  • 近隣に住み毎日のように買い物に来て頂く住民もあるが、やはり広域経済圏を作っていかないと成り立たない。そのためには連合化で道の駅が協力し合う必要がある。駅同士の信頼を深めるには酒を酌み交わしたりゴルフをしたりという遊び心も必要だ。
  • 行政とは丁々発止で、本音でぶつかり合うということがよい結果に結びつくと考えている。

まとめ 賦勺尚樹

  • 確かに3つの基本機能のうち「地域との連携」の具体的な意味はわかりにくい。地域連携というのは「地域ネットワーク」を保つことだ。地域との連携がきちっとできていない道の駅からは価値のある情報も価値のある産品も何も出てこない。それらがあって初めて連合連携化が成功するのだ。道の駅の本来あるべき姿として大事なのは「地域ネットワーク」を持っているということなのだ。
  • 蛸壺連携というご意見があったが、連合連携化ができていても参加駅は粒ぞろいなわけではない。売上規模も特徴も異なる。しかしそうした異質な駅が積み重なることで全体として強くなるものだ。
  • 本来の道の駅のあるべき姿は何なのか、それは国交省の言う基本要綱をきちんと守るということだ。とりわけ近隣地域との連携、「地域のための収益の仕組み」をきちんと考えて、それが大切だという「共通認識」が無いかぎりは連合連携もできないだろう。
  • なぜ連合連携が必要かというと、一つの道の駅で戦っていると勝てないからだ。今のうちに10ぐらいの駅で結びついていれば力は増す。行政との交渉も自分の道の駅で抱えていてはできない。いくつかの道の駅がまとまればできる。
産品交流会

セミナー終了後には各道の駅が持ち寄った地域の特産品を紹介し合う「産品交流会」を開催。活発な商談が行われました。

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