道の駅セミナー(第5回)講演要約
12月5日東京東銀座にあるJJK会館にて第5回道の駅価値創造セミナーが開催されました。
その時の講演の要約をご報告致します。
テーマは『情報』です。
道の駅として発信すべき情報は何か?どのような考えに基づいて発信すべきか?
発信する効果は何か?そして道の駅の情報を束ねている未知倶楽部として次ぎのステップとして何を目指すのか?
これらについて極めて有意義且つ濃密な内容が出ました。より一層道の駅に秘められているの可能性の存在を実感した次第です。
未知倶楽部より
第1部 先進事例報告
1.道の駅あさご(兵庫県朝来市) 駅長 黒川あや子氏
【道の駅の概要】
- 村おこし事業の一環として1988年にオープン。
- 朝来市の特産品のほか、但馬2市3町、播州、丹波地方の特産物の販売なども行う。
- 全国から多くの視察団や県民交流バス、グリーンツーリズムバスを受け入れている。
- 新聞、機関紙、テレビ、ラジオなど多くのマスメディアを通じてPRを行い、売上の拡大、販路開拓につながっている。
【イベントの活用】
- 行政の立場からも、また企業活動の面からも、人々の間を繋ぐ社会的なコミュニケーションシステムの構築をどのように行うかが重要であり、イベントこそ双方向的コミュニケーションシステムである。
- 構築の主要は、担い手・場所・機会である。
- イベントの成功により、売上は伸び、リピーターも増える。また、地域の方々のコンセンサスづくりにおいても大きな意味がある。
【都市と農村の交流】
- グリーンツーリズム:地域農業の再生、地域活性化との関連でその果たす役割がより重視され期待されている。
- 「交流」をキーワードにスローフードの里づくりを目指す。新たな魅力あるスローフードの里が出来ることで、南但馬の関心が広がり、観光のきっかけづくりになるよう目指している。
【地域づくりとビジネス】
- 道の駅は売れる場づくりである。生産から販売まで、どのポジションにおいても消費者のベネフィットを的確にとらえ、それをベースに展開する。
- その基本コンセプトは消費者と生産者が、お互いに接触できる場所の提供。
- そこに住む地域の方々全員の意識のリフォームも重要となる。自分の町を愛することが、「豊かな町づくり」への夢と期待を支えることとなる。
【情報の提供】
- マスコミへのパブリシティを積極的に行う。
- 小さくても確実な情報を発信する。
- 「自分の情報」を発信する。
- どういうコンセプト・どういうアイディアで小さな情報を提供していくか、毎日の創意工夫が大切。
2.道の駅きりら坂下(岐阜県中津川市) 駅長 三尾弘成氏
【道の駅設立からの経緯】
- 平成10年3月、供用開始。
→山村振興等農林業特別対策事業の補助金で施設を建設。
「補助金が出るから作った」典型的な行政主導型の施設 - 事業計画の不備、収入の4割が行政といった状況などから、初年度に年間売り上げに匹敵する損失を計上。
- 平成11年8月、道の駅登録。翌年3月に、道の駅として供用開始。
【原点に戻った経営改善】
- そばを使った町おこし。=地産地消
→椛の湖自然公園でそばを栽培しており、栽培・製粉・製麺すべてに携わる。 - 五厘饅頭も復活させ、道の駅でそば打ち体験、饅頭作り体験、栗きんとんの絞り体験が可能に。
【メディアへの対応】
- テレビ、ラジオなどの情報提供依頼に、積極的に情報を提供。
- 自らも素人レポーターとして活動。
- メディアへのPRにより、売上の伸びにも効果あり。
- 自分がメディアに出ることで、道の駅への来場者が親しみを持ってくれるという効果もある。
【地域と情報化】
- 道の駅の情報とともに、地域をPRする。
- 同地域の道の駅との連携をとりながら、地域を知ってもらう。
→東濃道の駅連合会の活動 - 未知倶楽部のHPにおいて、コラムを投稿。
- 「へぇ〜」とか「そうだな」という情報よりも、「わぁ〜、凄い」という情報。
→自分ではそんなにすごいと思っていなくても、他から見ればすごいと思うことはたくさんある。=全てがビジネスチャンスになる。 - 情報の信頼性が大切。
→情報を見てきたお客様を裏切らないことで、良い緊張感が生まれる。
3.道の駅浅虫温泉ゆ〜さ浅虫 駅長 細井仁氏
【情報の必要性】
- お客様が求めている情報は多種多様である。
- 積極的に情報を提供することで、地域を宣伝し、地域の活性化につながる。また、それにより道の駅の売上も向上する。
【道の駅としての情報発信】
- 待ちの態勢から、攻めの態勢へ。出張販売を積極的に行う。
- いかに地域に貢献するかということをコンセプトの一つにおきながら、道の駅として常に地域の最先端の情報を提供する必要がある。
【インターネットでの情報提供】
- 利点:全国あるいは全世界の方がお客様となる。リアルタイムに情報を提供することができる。
- 苦労点:情報は常に新しいものでなければならない。対応する人員が必要となる。
【未知倶楽部への参加】
- 第3回情報大賞金賞受賞に際して、報道機関へ情報提供することにより、経済効果有り。
- 未知倶楽部を中心に全国の道の駅と交流することによって、道の駅同士の直接の取引などが出来ることを期待している。
【情報発信による効果】
- 全国に情報を発信して、地域を知ってもらう = 活性化につながる。
- 地域の収益がアップすることにより、道の駅自体の収益のアップにもつながる。
【未知倶楽部への参加】
- 津軽半島「道の駅」の会
→東北新幹線沿線の9つの道の駅で構成。観光振興を目的に、産品の交流を通して、共同商品の開発・販売を目指している。 - 浅虫温泉地域活性化懇談会
- 八甲田沖揚コーン
- 商品欠品防止システム(さんちょ)導入
→携帯電話を通じて、生産者が自分で納めた商品の売れ行きを確認できる。管理者側からイベント情報などを一括送信しており、納品の見込みが立てられるなどのメリットもある。
第2部 パネルディスカッション「道の駅を核とした地域情報化の展望」
コーディネーター:丸田一氏
マスメディアに出ることによって、どんな伝わり方をして結果としてお客さんが増えているとお考えですか?
三尾:道の駅だけでなく、周辺地域のイベントや地域の他の道の駅を紹介したりしている。そうすると、そのイベントに行ったお客さんが帰りにきりら坂下に寄ってくれたりする。地域全体をPRすることを心がけている。
ブログなどでも顔や素性が分かっていると、利用者は信頼を寄せられるし、親近感がわいて道の駅に会いにいくのでは。
三尾:すごく実感している。親しみを持っていただける。
マーケティングについてお話ください。
黒川:やはり、情報とマーケティングというのはイコールである。また、通信ネットを利用できない方への配慮も必要。そういう方へは新聞やメディアへパブリシティしている。お客様にどう対応するかということもマーケティングの一つの要素である。ホスピタリティ(おもてなし)が基礎となってマーケティングに繋がっていく。
ポスシステムの導入の経緯についてお話ください。
細井:野菜の端境期に、スーパー代わりに利用してくださるリピーターの方々のためにも、いかに欠品商品を失くすかということで導入を開始した。利用者にも好評を得ている。
最後に一言お願いします。
黒川:いかに自分の町を愛するか。愛しているからこそ情報発信ができる。また、小さな情報でもいいから確実に毎日こつこつと創意工夫を重ねて情報発信していくことの大切さを今日は学んだ。
三尾:交流だけでなく、“往来”という部分が必要。やはり、お客様に来ていただくということが大切。皆さんと触れ合いながら地域を知っていただくということをより進めていきたい。
細井:まだまだ地方からの情報発信はあるなと感じた。地域あっての道の駅だということを念頭に今後も指導していきたい。
講演「情報化による道の駅の価値創造〜地域情報化の最前線〜」
丸田一事務所 丸田一氏
【情報化とは】
- 情報技術の登場を契機に起こる社会変化、「コミュニケーション革命」
- 新しい情報技術は、コミュニケーションの可能性を拡大させると同時に、不確実性を拡大させる。不確実性を縮減し、可能性を具現するのが「メディア」である。
【新しい人間活動の場】
- 情報をアップロードすることによって、現実空間のミラーとしてウェブ空間が登場。
- Googleなどの検索エンジンの台頭で、(ウェブ空間は)現実空間と同じ位の活動の場へと成長していくこととなる。
- 1970年代から始まった中心市街地を巡る地元商店街と大型店の闘争に、1990年代後半からはeコマースが台頭してきており、現在ではほぼ1:1:1の割合にまでなっている。
- 学校、家庭、地域で居場所を見出せない子供たちが、ネット社会で居場所を作っている。
【メディアと地域】
- 最近の地域情報化の特徴として、地域to地域の情報化が増えている。中央(中央政府、総務省、国土交通省など)を介さず、直接地域同士が結びついている。
- 地域SNSは全国各地に広がっている。
- 佐渡・お笑い島計画(新潟県)
→地震の風評被害によって、観光客が激減したことがきっかけ。吉本興業と組み、オーディションにより若手お笑い芸人1組を「お笑い親善大使」に任命。半年間島で生活し、島での出来事を毎日インターネット放送やブログを通して発信。これにより、多様な情報発信が可能となり、地域内の交流メディアとしての機能やデータベースとしての機能も果たしている。 - インターネット市民塾(富山県)
→市民の講師活動のロジや受講者募集などのサポート、代行するプラットフォーム。 誰でも教える側になれる仕組みになっており、市民は誰でも講師として講座を開設できる。講座テーマの大半が地域であり、地域を見つめ直す、地域を発見することが出来る。地域情報・知識がWeb教材にも集約される。
【結論】
- 道の駅も、メディアを持つことが必要。
→大きなメディアでなくてよい。まずは情報発信の仕組みさえ持っていれば、それはもうメディアである。 - 単に情報発信するだけではなく、インターアクティブな関係を持ち込むことも重要になってくる。
第3部 「道の駅と利用者のネットワークづくりを目指す未知倶楽部の取り組み」
伊藤忠商事株式会社 未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹氏
【将来ビジョン】
- 道の駅と地域内外の住民、および住民間の情報流通を活性化させることで、道の駅及び地域の魅力を高め、地域への集客を促進し新たな地域ビジネスの創出を図る。
- 未知倶楽部は、道の駅−地域内外の住民とを結ぶ、情報を流通させるプラットフォームとしての位置づけにある。
【ポータルサイト「未知倶楽部」】
- 2006年3月に開設。2007年12月4日現在、登録道の駅は198ケ所。
- 280万PVを累積。(恐らく道の駅関連ではNO.1 ※非公式)
- 道の駅の基本情報、新着情報、最新イベント情報、ユーザーレビューなどのコンテンツがある。
【ポータルサイト立ち上げの効果と課題】
- 効果:地域資源の発掘・発信面では一定の成果を上げることが出来た。
- 課題:情報発信が一方通行。道の駅の紹介情報が大半で、結果としてユーザー層が限定。道の駅と会員との間、会員同士に隔たりがある。
- 道の駅情報と会員情報を融合させ、“情報の質的転換”を図り、地域への集客効果を示す段階に来ている。
【未知倶楽部カフェ】
- 狙い:ドライブライフに役立つ情報を収集・交換できるコミュニティを立ち上げ、未知倶楽部会員との関係強化を図る。
- ポータルサイト「未知倶楽部」ともコンテンツ連携
- コンセプト:ユーザー同士の気楽な会話により、ドライブ情報の入手やユーザー自身による旅の企画などが行える「車でのお出かけ支援」コミュニティ
- ターゲット:ドライブを楽しむ人、特に道の駅の主要顧客層である中高年層
【未知倶楽部カフェの発展シナリオ】
- フェーズ1(2007年11月〜2008年3月):試行期
→コンテンツ開発、コミュニティ活性化、運営基盤の確立を目指す。 - フェーズ2(2008年4月〜2008年9月):醸成期
→集客強化と質の維持、コンテンツの拡充、リアリティとの連携(会員と地域との直接的交流)を目指す。 - フェーズ3(2008年10月〜):ビジネス化期
→定着、地域ビジネスモデルの確立(地域―企業連携)を目指す。
丸田一氏
左から
道の駅あさごの黒川駅長
道の駅きりら坂下の三尾駅長
道の駅ゆ〜さ浅虫の細井駅長
賦勺尚樹室長