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基調講演「成功する地域ブランドの条件」要旨学習院大学経済学部経営学科教授 青木幸弘

基調講演「成功する地域ブランドの条件」要旨学習院大学経済学部経営学科教授 青木幸弘

地域ブランドが求められる背景

  • 単に地域の農産品や加工品を売ろう、という時代から、地域全体をブランド化しながら地域活性を図ってゆく時代へと移ってきている。

そもそもブランドとは何か

  • 所有者を見分けるために家畜に付けた焼印、が原義。
  • 価格競争をまぬがれえない単なる商品=「コモディティ」を脱却し、他の商品との違いを明らかにし、その違いに意味や価値を認めてもらえる、ということがブランドの根本。
  • 成功するブランドは、しっかりしたコンセプトを持ち、顧客・消費者に他の商品・サービスとの差異を認めてもらっており、そこにいろんな意味を込めてゆくことができている。しかも顧客とのコミュニケーションを維持し、その差異を具体的な価値として顧客の満足に繋げるような継続的な働きかけを行っている。

それでは、地域ブランドとは・・・

  • 地域ブランドを考えるうえで基本的な視座は二つ。“ブランディングする場としての地域”と、“ブランディングの対象としての地域”
  • 地域資源をブランド化することによってその資源の競争力を高めるのが最初の段階。ブランド化する地域資源の数が多くなってくると、それらが地域らしさを核としながら相互に結びついて、地域全体のブランド化につながる。
  • 一見ありきたりのような資源、一旦マイナスイメージがついてしまった資源、既に見捨てられてしまった資源の中にも、打ち出しようによっては「お宝」になる可能性はある。

地域ブランドの維持から地域振興へ

  • 地域ブランドとは、単に登録商標をとってラベルをつける、というだけでは維持できない。価値を認めてもらえる独自性があることが重要であり、かつその価値を担保する仕掛けが必要である。
  • 地域ブランド商品を地域振興に結びつけるためには、地域産品が大消費地で売れることも必要。一方、観光資源や商業施設などの地域資源は、地域に大消費地のお客さんを招き入れることが必要となる。こうした「送り出すブランド」と「招き入れるブランド」を相互に関連付けることによって、地域ブランドの価値が高まる。

成功する地域ブランドの条件

  • 変化の時代に対応するためには、三つの“T”に注目する必要がある。取り去るべき“T”=タブー、目を離してはいけない“T”=トレンド、守るべき“T”=タイ(人と人の絆)。こうして、変えねばならないところを変え、変えてはいけない部分を守るという、この切り分けがブランドマネジメントの真髄といえる。
  • この延長として、地域ブランドを確立するための五つの“T”をまとめたい。地域的およびカテゴリー上の“Territory”(領域設定)、ストーリー性の“Theme/Tale”、手法や道具立ての“Tool”、“Team/Teamwork”、“Trust/Tie”(信頼と絆)、の五つ。
  • まずはテリトリーを設定し、そこでのテーマを考えることが重要な一歩だ。そこで必要とされる視点として三つの“T”も紹介したい。それは地域の人が余り評価していなくても実は非常に優れた“Treasure”(宝物)を見つけること、入り込み客と回遊客の動きである“Traffic”(動線)を考えること、そして地域ブランドを発信するための“Trigger”(ひきがね)を設定すること、である。
  • 地域ブランドを作る上での重要なツールは「地図」と「暦」だと考える。また、ITも当然重要となってくる。
  • チームワークは地域ブランドの創出のために不可欠である。地域振興には、「バカ者」(自己の利益を度外視して物事を進める人)、「ワカ者」(世代間での継承を担う人)、「ヨソ者」(外部や顧客の視点から冷静・客観的に判断できる人)が必要といわれている。

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