「第4回 道の駅価値創造セミナー」のご報告
2007年02月06日
去る12月4日(月)、「第4回 道の駅価値創造セミナー」が開催されました。その概要および講演・発表の概略についてご報告致します。
≪過去(第1回〜第3回)のセミナーの内容はこちらから≫
【今後の観光スタイル】
【地域主体のまちづくり】
【今後の道の駅】
【新しい挑戦】
【新しい挑戦】
住民参加の地域づくり、という観点から考えると、地域資源の発掘・活用のためには、地元住民や学生を巻き込みながらワークショップスタイルとフィールドワークで資源を整理し、地域らしさと統合させながら展開するのが望ましい。
【地域資源を発掘する方法】
【地域資源を活用するためのプログラム化】
【今後の道の駅の取り組みに寄せて】
◆総合テーマ◆ 道の駅を拠点とした新しい“旅”のあり方 |
開 催 概 要
日時 | 平成18年12月4日 午後1時30分〜18時 |
場所 | 日本情報サービス産業厚生年金基金会館(東京都中央区築地) |
内容 |
【第一部】基調講演 株式会社ジェイティービー 常務取締役 事業創造本部長 清水愼一氏 「これからの“旅”のスタイルと道の駅の可能性」 【第二部】事例報告 道の駅杉の湯川上 駅長 久保信幸氏 「地域ネットワークを通じた観光周遊コースづくり」 道の駅土岐美濃焼街道どんぶり会館 駅長 丹羽正孝氏 「美術館との連携による地域文化再発見の試み」 【第三部】提案 株式会社日本総合研究所 上席主任研究員 金子和夫氏 「地域資源の発掘と活用の方法」 伊藤忠商事株式会社 未知倶楽部室長 賦勺尚樹 「新たな“旅”の時代に向けた未知倶楽部の取り組み」 |
|
|
|
|
|
講 演 内 容
基調講演『これからの“旅”のスタイルと道の駅の可能性』
株式会社ジェイティービー 常務取締役 清水愼一
【観光形態の変化】- ・小泉前首相は2003年の施政方針演説で、観光に24.5兆円の経済効果があると説いた。しかし、観光産業において増加傾向が見られるのは海外旅行とインバウンドのみ。国内旅行は1993年から低迷状態が続いている。
- ・その背景には、国内旅行産業の成熟化傾向がある。そこでは、顧客の“個人化””多様化”“専門化”が進み、従来の中央主導・発地主導型の観光コンテンツは陳腐化している。
- ・リピーターにとって魅力ある観光コンテンツは、地域自身の魅力に係るものであり、今後は地域主体での工夫が必要となる。
【今後の観光スタイル】
- ・従来人気のあった団体旅行、大型観光バス旅行などの観光需要は減り、個人客として旅行する人が多くなった。
- ・お客様も目的重視の旅行を求められるようになり、多くの滞在地をあたふた移動するよりは、少ない箇所にゆっくり滞在する旅が望まれている。
- ・滞在型の旅行では、「食事は現地の人が普段食べているようなものを食べたい」「お土産は地元の人が使うような雑貨が良い」といった、地元への志向が強く現れる。いわば「非日常」ではなく、「異日常」体験への欲求である。
- ・そのため、観光客向けに特別な仕掛けをしたり施設を設けたりすると、観光地として魅力を増すどころか却って逆効果になりかねない。
- ・民俗学では「旅」は「他火」であり、自分の火が揺らいだときに他人の火に当たりながら元気をもらって帰って来ることだといわれている。観光とは国の光を観ることだ。旅や観光は本来の姿を取り戻しつつある。
【地域主体のまちづくり】
- ・これからの地域づくりには、「住んでよし」「訪れてよし」ということが求められる。地域が自分達でアイディアを出して自ら立ち上がるところには元気が生まれ、元気のある地域にお客様が集まる。
- ・地元への志向が強い観光スタイルのもとでは、他の地域にない歴史や文化、そして食を大切にすべきであり、都会の真似をすべきではない。
- ・現状では、地元の情報を欲している観光客を受け入れる態勢が全くできていない。「観光案内所でパンフレットを配るだけ」「縦割り的な情報を提供するだけ」では観光客は不満。
- ・地域には、地元の人が楽しく集まる場所がある。神社、商店街、公民館、介護施設、図書館など。これらの、いわば“地域のへそ”が地域観光の拠点となってほしい。
【今後の道の駅】
- ・国内観光の主な交通手段は自家用車が主流となった。道の駅は “地域のへそ”になる可能性が十分にある。
- ・道の駅の中には、従来の道の駅の機能に加え、コミュニティの拠点、地域住民が集う場、旅人が地域住民と触れ合う場、といった新たな役割を果たすものが出てくるのではないか。
- ・観光コンテンツは地域の人が考えて売る。そういった新しいツーリズムが徐々に実現する中で、これからの観光まちづくりには“協働”というコンセプトのもと、地域住民が自由に集まる場所が必要だ。
- ・今後は道の駅の淘汰が進むだろう。新しい役割を担いうる道の駅と、そうでない道の駅とに分化してゆくのではないか。
- ・そして、道の駅の質の向上のためには、道の駅同士のネットワーク化が必要であるし、そのためにはコーディネイターが不可欠だ。
事例報告『地域ネットワークを通じた観光周遊コースづくり』
道の駅杉の湯川上 駅長 久保信幸
【道の駅の取り組み】- ・平成16年4月から、体験型ツアー商品を企画・販売している。滝や鍾乳洞を巡るツアーや、熊野でとれた食材を使った旬会席の提供など。
- ・「匠の聚(たくみのむら)」に集まっている芸術家や、フラワーデザイナーの方を講師とした体験メニューも定期的に実施。また、切り株や流木を活用した木工品を、定期的に開催される「ふるさと市場」で販売している。
【新しい挑戦】
- ・未知倶楽部を通し、他の道の駅の人ががんばっていることを知り、私たちの道の駅でも挑戦が始まった。
- ・まずは地元に何があるか、ということから考え始めることにした。地域のマイナスの部分も探し、それをプラスイメージに転向できないかどうか考えた。
- ・最も肝心なのは、目標をどこに定めるか、ということ。そのため、スタッフ35人全員参加の月例会を開催して、各人に目標を定めさせている。目標を設定したときに「そんなの無理」というところから始まるのではなく、従業員が自ら納得し、お客様を楽しませる、ということが必要だ。
- ・年内には来年1年間分のイベントスケジュールを目標付きで作る。いろいろな体験型メニューをアピールし、多くの方に楽しんでいただきたい。
事例報告『美術館との連携による地域文化再発見の試み』
道の駅土岐美濃焼街道どんぶり会館 駅長 丹羽正孝
【道の駅の取り組み】- ・岐阜県東濃地区の道の駅(当時9駅)は、平成15年3月に未知倶楽部と共同で「春のフェスティバル」を開催した。バスツアー、特産品のブランド認定、マイカーラリーツアー、各駅独自での各種イベントなど。
- ・道の駅として「隠れた文化資源、歴史、生活、芸術と出会える」ことを目標にしているが、「春のフェスティバル」ではそれを達成できなかった。そこで、今年度、「ぎふ東濃アートツーリズム」を実施している。
【新しい挑戦】
- ・「アートツーリズム」は東濃地区の10の道の駅と28箇所のアート施設が協力して実施している。施設への入場料によってマイレージポイントが貯まり、それを道の駅で景品と交換していただく、という仕組みだ。
- ・従来の課題として、個々のアート施設が孤立していて、他の施設や道の駅との連携がなかった点がある。「アートツーリズム」によってお客様の回遊性が高まったようだ。
- ・結局は地域の人が旅人に対するウリとなる。「街道文化の宿場街」としての道の駅は、外からのお客様を地域に案内して差し上げることが肝心である。
- ・同時に、道の駅は外の情報を地域の人たちに流していく機能も担える。私たちの道の駅は、愛媛県の道の駅「今治湯ノ浦温泉」と商品交流をしており、地域のお客様に喜んでいただいている。
提案『地域資源の発掘と活用の方法』
株式会社日本総合研究所 上席主任研究員 金子和夫
住民参加の地域づくり、という観点から考えると、地域資源の発掘・活用のためには、地元住民や学生を巻き込みながらワークショップスタイルとフィールドワークで資源を整理し、地域らしさと統合させながら展開するのが望ましい。
【地域資源を発掘する方法】
- ◆調査を企画する◆市民や大学生からなる推進グループを作る。地元の人が案内人として必要であるとともに、「ヨソ者」から見た魅力を見出す視点も重要である。
- ◆調査を実施する◆いろいろな人たちが一気に地域資源を洗い出す作業。調査グループに分かれてそれぞれが案内人を立ててまちを歩く。事前に作成する「地域資源カード」に、現場で発見したものをメモし、写真を撮る。
- ◆調査結果を整理する◆「地域資源カード」に書かれたものをマップにまとめ、報告書として作成する。調査に協力いただいた方へのお礼も忘れずに。
【地域資源を活用するためのプログラム化】
- ・住民を巻き込んで地域資源を活用してゆくためには、住民参加型のまちづくりネットワークを組成することが望ましい。住民参加のもと、地域資源を生かした事業を立ち上げるためには、最低6回のプログラムと半年の期間が必要だろう。
- ・毎回のプログラムで参加者が集まる際、単にアイディアを出し合うだけでなく、仲間をつくり、今後も継続して取り組んでゆけるよう配慮する。その結果、地域資源がイベント等として実現する。
- ・その際、やりっぱなしではなく、発表の場を設け、地域のトップの前で発表することが大事。
- ・「自分たちには何もない」という地域もあるだろうが、ワークショップに始まり、資源発掘、コンセプト作り、町歩きなどのフィールドワーク、商品企画、発表会、といった手順で進めてゆけばきっと実を結ぶ。
提案『新たな“旅”の時代に向けた未知倶楽部の取り組み』
伊藤忠商事株式会社 未知倶楽部室長 賦勺尚樹
【今回のテーマ…過去のセミナーを振り返りながら】- ・第1回目のセミナーでは「道の駅の連合連携化」、第2回目は「未知倶楽部のブランド」に関して、第3回目は「ライフスタイルからみる道の駅の利用者」を、それぞれ議論してきた。
- ・今回のテーマは“旅”。今後、個を重んじる旅行者が増えるため、旅の姿も成熟してゆくだろう。成熟した旅とは、押し付け型の旅行ではなく、ひとつの場所をゆっくりと楽しむ旅の姿だ。
- ・それゆえ、従来の団体旅行では得られないような、何気ない風景、素朴な料理、地域の人の普段の生活、普通の宿や民家、そういったことが旅の魅力となっていく。
【今後の道の駅の取り組みに寄せて】
- ・引き続き未知倶楽部は「道の駅の連合連携化」を提唱してゆきたい。道の駅をいくつか含むまとまったエリアを一つのブロックとして域内の連携を図れば、観光資源のバラエティを増やすことができる。また、優れた道の駅が周囲を牽引することによって、ブロックの道の駅全体の質的向上がもたらされる。
- ・地域資源をブロック内で編集する作業が肝心。どの情報がどこにあるか、といったことが整理しきれていないのが現状だ。
- ・地域資源の情報をすべて晒し出した上で、次に利用者視点に立って情報の再構築を行う。そしてそれらを企画へと落とし込み、利用者へと提供していく。
- ・未知倶楽部も、現在のウェブサイトを更に充実させ、各道の駅からの周遊コースをコンテンツとして展開するなど、道の駅の更なる資産価値向上を果たしてゆきたい。
以上
第1回セミナー『ブランディング手法による道の駅の活性化』(2005年10月31日)
|
||||||||||
第2回セミナー『地域ブランドの新しい姿』(2006年3月2日)
|
||||||||||
第3回セミナー『消費者ニーズに対応した道の駅づくり』(2006年7月10日)
|
(肩書きは開催当時)
執筆者
未知倶楽部室