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未知倶楽部コラム

セミナーに寄せて

2006年12月06日

一昨日の12月4日(月)、第4回目の道の駅価値創造セミナーが開催されました。

基調講演には、旅行業における権威ともいうべき株式会社ジェイティービーの清水愼一常務取締役をお招きしました。
清水常務は、観光業に関する各種の統計データを示されながら、旅行の形態が団体から個へと移行している様子や、地域への旅が今後の主流になることを述べられました。そして、それを実現するためには、旅行客の受地となる地域の魅力を向上させることが不可欠である、というご指摘を頂戴しました。
また、利用者としての交通手段も、バスからマイカーへと主役が移行しつつあり、そうした“ドライブ観光”の時代が到来する中では、道の駅は“地域のへそ”となる可能性を秘めている、といったご示唆をいただきました。

続いて、お二人の駅長さんから、それぞれのお取り組みについて発表していただきました。

道の駅杉の湯川上(奈良県)の久保信幸駅長は、限られた資源を利用者にとって思い出深い企画として提供しているお取り組みについて話してくださいました。そこには、地域住民が一丸となって地道に創意工夫を重ねてゆくご努力があるようです。
また、道の駅土岐美濃焼街道どんぶり会館(岐阜県)の丹羽正孝駅長からは、美術館と道の駅を連携させて相互に魅力を向上させていく試みについて伺いました。公共施設と市町村との連携不足の問題を、アートと道の駅とを連携させることにより解消させようと尽力なさっているとのことです。

※セミナー講演内容に関する詳細は、未知倶楽部ウェブサイト上で後日あらためてご報告致します。

お三方のお話に共通している点は、時代が着実に変化しているということです。従前の例を使い回すだけの安直なビジネスモデルでは、これからは通用しません。知恵も汗も絞らずに金を儲ける、そんな時代は終焉を迎えつつあるのです。

いわば成熟した個の確立の時代の到来……それは消費者にも地域の人たちにも起こりつつあります。
消費者が成熟した個を確立するということは、供給する側は待ったなしの自助努力と創意工夫を要求されるということです。さらに踏み込んで言うと、アイディアのない人はもはやビジネスの世界で存在理由を失うということでもあります。問題集を解けても問題用紙が作れない人は存続できません。白い画用紙を与えられた時に、自分でモチーフやオブジェを見つけることが出来なければ、今後のビジネスの世界で生き残れなくなるのです。

こうした一連の流れは、地域に特有の問題ではありませんし、旅行業のみに特有の問題でもありません。あらゆるビジネスシーンが共通して直面している課題であって、都会に住む人も含めてこの問題意識を共有する必要がある、と認識を新たにした次第です。

「地域には謎が多い」「地域には固有の問題があり、それは解きにくい問題だ」等々、都会に住む人間は他人事のように地域を捉えてきました。しかし、都会人が冷ややかに地域を見下す時代は終わりつつあります。

現代日本は、利便性が高く近視眼的な生き方や儲け方をあくせくと追求してきました。その過程で、そうした効率性にそぐわない価値や富は見捨てられました。日本の地域には、見捨てられた価値や富がまだまだたくさん残っているはずです。戦後60年を経て、これらを再生し取り戻す挑戦が、まさに見捨てられてきた地域から起こっているといえましょう。

従来の価値観では生き残れない、という事態を、地域が先駆けとなって教えてくれている。そうした謙虚な姿勢を都会人は持たねばならない、と痛感しています。

執筆者

未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹

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