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未知倶楽部コラム

注目される道の駅

2009年10月08日

道の駅がここに来て俄かに注目されております。

私へのマスコミからの取材が増え、道の駅の売上高等のデータ、成功モデルを成し遂げている道の駅の紹介、これからの道の駅のあるべき姿等々の質問を受けます。皆、真剣に話を聞いて下さり、また、適切に記事として紹介して下さります。

数年前のことです。
某民放テレビ局(在京:全国ネット)の方などはいきなり電話を掛けてきて、

「こんにちは。XXTVのYYです。今、未知倶楽部さんのHPを見て電話しているんですが。今度うちで道の駅の特番を制作しようとしているんですけど未知倶楽部さんが良く道の駅のことについてご存知の様なんで、教えて欲しいことがあります。 道の駅といいますとソフトクリームで有名ですけど、ある知り合いがどこかの道の駅、栃木だったか、群馬だったか、そこで150円で、コーンの上に3個もアイスクリームを乗せて販売しているという話を聞いたのですが、それってどこか知っていますか?それとか一風変わったソフトを販売している道の駅って知りませんか?」

「。。。。。」 (絶句。。) (取り直して)

「すいません。私はソフトクリームが嫌いではないんですけどダイエット中でなるべく道の駅に行っても食べないようにしていますので知りません。知人にソフトクリームにしか興味のない変人がおりますが、彼を紹介しましょうか?」

とかある局の方は、

「ランドマークで有名な道の駅の特集を組もうとしてるんですけどご存じないですか?」

「ランドマーク。。。。例えば岐阜の恵那にある道の駅‘おばあちゃん市・山岡’のあの直径24Mもある巨大な水車のようなものですか?」

「いや。。それも良いですけど、そういう堅苦しいものじゃなくて。。例えば、巨大なガンダムのような。やっぱり、子供受けしないと番組にならないので。。」

「それはそうかもしれませんが。道の駅ってそんな程度のところではないですよ。地域の人たちが一生懸命生きている姿が集積されているところで、その姿こそが都会の人たちの心に響いている訳で、もっともっと本当の姿、これからの可能性とかを伝えなければいけないではないでしょうか。例えば。。。。」

「いや、おっしゃることは良く判るんですけどね。出来ればそういう内容の取材をしたいと思っているんですけど『受けない』んですよ。それと時間的にも限りがあるし。まあ、5分程度なんで。」

このような受けが良いとかそういうレベルでしか道の駅を見ない姿勢に対して、大きな失望を抱いて 来ましたので、最近のマスコミの取材内容(知りたいこと)の質の高さは正に隔世の感です。

道の駅の潜在力に早くから着目し、一切軸をぶらすことなくそれを信じて、挙句は会社で組織まで作ってしまった私としては感無量、心に中で溢れ出る美酒に酔いしれております。

それでは今までと変わらない一般企業(食品関連)の場合。。

「最近、道の駅って注目されていますよね。未知倶楽部さんの記事を読みましたよ。私も千葉県にある道の駅に週末行ってきましたけど、大変賑わってましたね。うーん。あのコンセプトは良いですね。これからは道の駅だと‘確信’しました。 そこでうちで道の駅で販売されている特産品なんかを取り扱いたいんですがご協力頂けませんか? 私も地域の為に何か貢献したいんですよ。世のため人のためは大切ですから。」

「ご協力と言いますと。。うちは4年前に会社から莫大なお金を使わせて貰い、道の駅の産品のブランド化を試み、ビックサイトでふるさと道の駅フェアを催したことがあります。ディスプレーにも惜しみなく金を注ぎ込み他の出展ブースを大きく引き離したし、専用カタログも作ったし。マスコミにもデカデカと取り上げてもらいました。 またうちは関与しませんでしたけど一部の道の駅の方は大手食品スーパーと取引商談がまとまったみたいです。
 でもでもまだまだ。課題は、良い品だけど、都会ではなかなか売れないので、どのようにしたら売れるようにするかとか、そういう行為を通じて地域経済を活性化させて、地域の生産者、加工業者に自信と か誇りを呼び起こしたいと思っています。そういう活動にジョインして頂ければありがたいのですが。」

「いや。。室長さん。。それはとても良いことです。ある種のCSR、社会貢献事業ですね。尊敬します。」

「お褒め頂きありがとうございます。でも現実は苦しみの連続で。。殆どの道の駅、地域の方には貢献出来ていなくて申し訳ない気持ちで一杯なんですけど。。 ところでどういう特産品に興味があるのですか?」

「そりゃ。。売れている商品ですよ。宮崎のあの知事なんか上手いですよね。ああいう東京の消費者が直ぐ飛び付くような知名度があって、直ぐ売れる商品ですよ。弊社は売れない商品は取り扱わない方針なんで。。どんな品でも良いんです。売れていて、売れれば。」

「でも道の駅ってこれから売れる可能性があるのだけど、未だ商品のパッケージ、紹介の仕方等には課題が多くて。。開発力も不十分です。 でもそういうところを一緒に手伝って下さればヒット商品 は沢山出ると信じていますけど。 先ずはテスト販売として売り場を提供頂ければ地域の皆様喜ぶと思いますけど。。」

「いやいや。。室長さん。我が社は売れないものは取り扱わないんです。販売コーナーの例え目立たない小さな棚でも充分儲けてもらわないと。。最近の消費者は財布の紐が固いんで。。知らない地域のものなんて買わないでしょう」

「。。。ところで何をしたいんですか?」

「未知倶楽部さんの方で売れている商品を選定して欲しいんですけど。。その中からうちの方で売れそうな商品を選びたいと思います。」

「申し訳ありませんけど。。あなたのお立場と気持ちは判りますけど。。XXXXXX(怒り)!。」

道の駅は最近マスコミの露出度を高めております。一般の利用者、消費者の方の多くの方は表面だけでなく道の駅という地域の人たち、地域の営みを集積させた世界について、かつてどこにでも有ったあの懐かしいふるさとの文化、商店街の文化をオーバーラップさせて、ファンになっているのだと思います。

一方で、我々皆が理解しなければいけないことがあります。

道の駅といいますか、地域には都会のマーケットで戦う力がまだまだ足りないということです。実力それとそれを身に付ける経験が不足しているのです。

私は都会の企業、それも消費者に対して影響力が持てる企業が、たとえ経営が厳しくても道の駅(地域)の為にほんの僅かでもマンパワー、資金を提供し、売るチャンスを作って差し上げれば道の駅(地域)の皆様は経験を通じて実力を身に付ける事が可能だと信じております。

道の駅というのは単なる民間の商業施設ではなりません。利益が上げられなくなったからと言って(つまり経済合理性に基づいて)容易に撤退できる施設ではありません。そこには地域の人との繋がり、地 域の人達の想い、地域の可能性、そして夢があるのです。

もし道の駅にそれが無いとしたら、それを設置責任者である市町村は地域の為に作り上げる義務があるのです。だからこそ消費者、企業はもっと深くそして冷静に道の駅というものを見つめる必要があると思っています。

マスコミ、消費者、企業から注目される。。というのは嬉しいことです。でも道の駅側はこのチャンスを元にもっともっと将来を見据えてどうすれば道の駅を通じて地域経済を立て直すのか、地域アピールをするのか、地域ファンを作るのかこの原点を忘れずに着実に歩んで欲しいと心から願っております。

また気をつけなければならないことがあります。

道の駅が注目されればされるほど道の駅の仕組みを一般企業が真似るでしょう。既にある首都圏のスーパーでは生産者の顔を張り出して‘顔の見える青果物’だけでは訴求力が足りないと感じて、専用棚に農家の生産者が朝、夕と直接野菜を持ち込み、補充するという演出を取り入れて、それを以って「道の駅的なスーパー」として宣伝しております。

ある種道の駅のパーツ(一部)の‘良いところ取り’です。道の駅が注目されればされるほど、道の駅はこのような新手な商売を駆使し仕掛けてくる企業達と戦わなければなりません。

そういう時代が直ぐに訪れるということを念頭に置いて、彼らでは絶対真似ることが出来ない仕組み、ノウハウを見つめなおし、それを大切にしてより一層参入障壁を高める努力を続けて頂きたいと思っております。


執筆者

未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹

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