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未知倶楽部コラム

機能充実の限界

2008年07月22日


 7月の連休&海の日が終わり、とりあえずの一段落。
東北以南は猛暑日続きとか。なのに、オホーツク海側は2週間も晴れの日がなかった。
気温も15度前後の日が続き、海の日どころか朝晩はストーブが必要な日も。
あと1ヵ月もすれば秋風が吹く土地だと言うのに、何てことでしょうか。

ガソリン高騰と不況風で連休でも来館者が大きく減少しました。
道の駅&物産館の気分は早くも秋風の様相です・・・

 さて、最近、道の駅連絡会事務局よりメールが流れてきました。
利用者からの道の駅に対する意見が紹介されています。

 キャンピングカーの増加に伴う要望としてご意見をいただいたようです。
その1:キャンピングカーに給水する場を設けるよう検討してほしい。
その2:道の駅駐車場で停泊する車を見掛けるが「停泊禁止」を掲げてほしい。
この2件が紹介されていましたが、確かにキャンピングカーや改造型ワゴン・バンも増えて
おり、停泊する車もシーズン中は増えます。道の駅としては戸惑いも感じています。

道の駅は全国で900駅に迫る勢いで増え続けています。
基本は「駐車場・トイレ・電話が24時間利用できる」こと。他にも地域の情報や道路情報
の入手ができたり、無料で休憩できるスペースが確保されていることが道の駅の条件です。

設置時期や立地条件で、駐車場の広さやトイレを含む各種設備にはバラつきもあります。
「ドライバーの休憩施設」として定着し、新鮮な物産品を求め観光バスの立寄りも急増し
ているようです。「休憩地」から「目的地」に変わった道の駅さえあるはずです。

ドライブ中の休憩や食事・情報収集、ついでに特産品も見ておこう・・・という利用者に
とって本来の「休憩施設」としての役割は十分だったと思います。
しかし、気がつくと「利用者の期待度」が設置目的を大きく超えるようになっていました。
最新設備を備えた新しい道の駅と十数年を経た道の駅では設備にも相当な開きがあります。

トイレも和式から洋式中心へ変わり、身障者用トイレも急速に進歩しています。
空調や照明、インターネット回線等々、時代と共に良くなっています。
時代背景もあり「休憩施設」の域を超えた「豪華な施設」も目にするようになりました。

ところが、施設が立派で快適になったとしても道の駅はあくまで「休憩施設」です。
特異な例を除けば『オートキャンプ場』としての機能も備えていません。
ここに利用者側との意識のずれ(差)が生まれます。乗ってくる車が変わったことにより、
無意識にキャンピングカーに合わせた設備を求めてしまうのでしょう。

キャンピングカー増加の背景もあり、設備の充実したオートキャンプ場も増えています。
キャンプのスタイルは変わり、食事と寝る場所を変えるだけの「家電持込」が当然となった
ようで、水道の他に「水洗トイレと電源」が必須と考えられているようです。

そうは言っても施設の数もまだ少なく不便な地域も多いでしょう。
ただ、キャンプ場まで行くのは面倒だし道の駅にはトイレや自販機もある。ついでに水も
電気も自由に使わせろ、と次第に無理を言う人が出てくることになりがちです。

 道の駅には水洗トイレは完備されています。しかし炊事場やテントを張ったり食事をす
る場所はありません。電源も作業用・業務用のコンセントしか設置していません。
キャンプや停泊の利用を目的としていないからです。道の駅は道路沿いで便利だから・・・
は「キャンプ場へ行くのを面倒がる人」の勝手な言い分です。

何でもあるに越したことはありませんが、設置費用や管理の問題は簡単ではありません。
「有料でもいいから」と言う方もいますが「公的施設なら水や電気くらい無料にしろ」の
声が勝るでしょう。残念ながら日本では水と電気のコスト意識が異常に低いのです。

昨年秋には道の駅裏手の登山者用水栓が開きっぱなしで何日も放置され、数十トンの水が
ムダに流されました。誰かがホースを勝手に繋ぎ洗車でもしたようですが、なんと蛇口を
閉めずに立ち去ったようなのです。(オフシーズンのため発見が遅れた=水道料も膨大)
登山者の喉を潤したり靴を洗うために設置した善意の水道ですが、とても残念です。

スタッフが帰った後に、トイレのコンセントにコードを繋ぎ投光器を点けバーベキュー
をしていたとの目撃情報もあります。電気の無断使用も困りますが駐車場で火を使うのは
絶対に止めて欲しいのです。家族旅行は子供に社会のルールやマナーを教える場でもある
と思っていますが、未だに「旅の恥はかき捨て」の親が多いようです。

駐車場の隅で何日か滞在する車も時折見かけますが、24時間開放している公的駐車場とし
ては簡単に追い出すわけにもまいりません。
私たちが帰る頃になると駐車場で夜を明かす人達が行動を開始します。
犬の散歩や晩御飯の支度。朝食とついでに洗濯も・・・。後に残るのは犬のフンとゴミ。
夏が短く利用者の少ない道の駅でもこんなことがよく起きます。

冒頭の方は水の補給場所を求めつつも、夜明かしを禁止するよう求めています。
たぶん模範的なオートキャンパー&道の駅利用者なのでしょう。
様々な注意喚起の看板はいくら設置しても効果は薄いものです。施設や他の利用者に直接
影響を及ぼすような場合はすぐに注意をしますが、通常は立ち去るのを待つのみです。
「毅然とした態度」も最近では「命がけ」のようですから。

乗用車では無縁だった給水や充電が、キャンピングカーに乗り換えると必要になった。
だから水道と電源を設置してほしい・・・。「たったこれだけ」のことですが簡単なこと
ではありません。有料でサービスを提供する施設であれば利用料金の調整で済みますが、
公的施設ではエイヤッとできないことも多いのです。

それよりも「道の駅本来の役割」をご理解いただいた上で上手に使って欲しいですね。
全部の駅がありとあらゆる設備を備えることは不可能ですし、差があって当然です。
どれだけ設備を充実しても「あったらいい、できたらいい」は次々に出てくるものです。
望みを叶え続けることは到底できません。

「楽あれば苦あり」という諺がありますが、そう都合よく「楽だけ」は巡ってきません。
人間は多くの便利さを手に入れましたが、それ以上に多くの貴重なものを失いました。
考えてみると身の回りには「無くても済むもの」がどれほど多く存在していることか。

大人も子供も「もう少し我慢する&もう少し待つ」努力をしませんか?
執筆者

道の駅サロマ湖 杉本武雄

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