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未知倶楽部コラム

目的地としての道の駅について

2007年04月05日

私が道の駅を見続けるようになってから4年近くになります。
道の駅に眠っている潜在的な魅力、力を信じているからこそ、 多くの人たちに道の駅に関する生の情報に接して頂きたい という願いを込めてこのウェブサイトを立ち上げたのです。 私は道の駅は訪れる人たちにとって十分に目的地に値する、 いや正確に言うと、その潜在的な価値があると信じております。

しかし、残念ながら世間ではそのような見方をする人は 多くありません。
殆どの人は、「道の駅。。あれは通過点だよ。スキー場 なり、観光地に行く為の立ち寄り所だよ。道の駅を目的にして 行く人はいない。」とおっしゃいます。とりわけ地域外の都会の 人たちにそのような意見が多いです。

道の駅そのものを目的として全国の道の駅を訪れている 私としては常に悔しさを感じております。
・・・しかたがない。自分自身も目的地としての潜在力があると 言っているということは、ある意味で未だ十分顕在化して いないことを認めている訳ですから。

ではどの要件を以って、私が道の駅は目的地となる得ると 信じているのか、整理してみます。

【要件】
@ 道の駅に行くとその地域にしかない特産品、料理、体験イベントなど地域の 魅力に触れることが出来る。
A 道の駅に行くとコンビニとは一線を画した日常的な姿で接している地域の人 たちとのちょっとした会話などのふれあいを楽しむことが出来る。
B 道の駅に行くと市販の旅行雑誌などでは紹介されていない地域の人が密やか に愛する観光スポット、温泉、食事処を教えてもらうことが出来る。
C 道の駅に行くと充実した道路情報等が提供されており安全・安心なドライブ が可能となる。



これらの要件について充分満たしている道の駅もあるし、そうで ないところもありますが、もし充分満たしているのであれば、 目的地となり得ることを完全否定する人はいないでしょう。

そこでもう一つの疑問が生じます。 もし、訪れる人がそれらを今望んでいなかったらどうなるかです。

例えばパリのノートルダム大聖堂を思い浮かべましょう。 敬虔なカトリックだと、お祈りをしたり、ミサに参列することを目的 としてここを訪れます。でもそれ以外の目的でこの大聖堂を訪 れる人もおります。彼らがこの大聖堂を訪れる理由は。。
   
  • パリに来て訪れない訳にはいかない程の有名なスポットだから。
  • フランスの歴史に触れたいから。
  • ゴシック様式に興味を持っているから。
  • 荘厳さと厳粛さを感じたいと思っているから。
  • 近くでお茶でも飲みたいと思っているから。
  • 何となく。。。

  • 様々な人が、色々な目的でこの有名な大聖堂を訪れます。 しかし、大聖堂が大切にするのは当然ミサに参列する人であり、 神父の言葉を真剣に聞いてくれる人です。つまり信徒です。また 大聖堂が内部を一般に開放する目的は、キリスト教の一端を 理解させ布教活動へ繋げようとする考えもある筈です。 (もっともノートルダム大聖堂ともなれば、フランスの顔であり、 観光事業の目的としても充分成り立っていますが。)

    他の宗教施設(寺、神社、シナゴーグ、モスク等。。)も基本的 に同じ筈です。またこの話は宗教的な施設に限らず、美術館でも 劇場でも、はたまたあらゆる商業施設でも同じく通ずる考えです。

    つまり人々がある場所、施設に望んでいる理由・目的は様々であり、 それは個人の自由なので、それを強要することは出来ませんが、 一方でその場所、施設側は、訪れてくれる人たちに訴求したい、 目的として欲しいことは沢山あるのではなく、 実は突き詰めれば一つだという事です。 彼らの伝えたいある一つの事柄にアプローチさせる為に 色々な人たちの目的を自由にしているとも言えます。

    そのような考えで道の駅を見てみると良く分かります。

    道の駅を様々な目的で利用、エンジョイしたい人たちがおり、それは それで良いのです。一方、道の駅側ですが、全ての人たちの目的 を自由に満たさせることだけではなく、自分達が訴えたい世界を、 利用者の求める世界とレベリング(合致)する努力を続ける必要があります。

    だとすると、そもそも道の駅は何のためにあるのか。誰のためにある のか。これを明確にしなくてはならず、その軸は絶対にぶらしてはいけな いのだと思っております。

    この軸をぶらさない地道な活動の末に、道の駅を目的地として訪れて 下さる本当のファンが増えて行くことだと信じております。

    今後とも是非、未知倶楽部にご掲載されている道の駅の皆様には 目的をもって情報の発信を続けて頂きたいです。一方、閲覧される 皆様も、道の駅に隠された本当の魅力を発見して欲しいです。
    執筆者

    未知倶楽部室 室長 賦勺尚樹

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