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エコステ研究会員の取り組み〜クロス10十日町編〜

2012年07月31日

クロス10十日町 外観2
道の駅 クロス10十日町
「道の駅 クロス10十日町」は新潟県十日町市にある、県内で18番目の道の駅である。当道の駅の近くを走る国道117号線は千曲川や信濃川に沿っており、川の上流から長野県長野市、飯山市、新潟県十日町市、小千谷市を結ぶ主要路である。信濃川はその先長岡市、三条市、新潟市を結び日本海にそそぐ。

高速道路は関越自動車道の六日町インターチェンジが最寄りである。
今回は上越新幹線越後湯沢駅からほくほく線の特急はくたかに乗り、美しい田んぼの広がる谷合をぬけて、十日町駅に降りた。特急はくたかは新幹線との連絡もよく、直江津で北陸本線に接続しており、東京方面から富山、金沢への主要な経路となっている。夏休みに入り郷里を訪ねる母子連れの姿が目立った。

駅を降りると小さなロータリーから商店街が伸びている。駄菓子屋の前のベンチで年配の女性たちが談笑している。歩いている人は少ない。どの店先にも黄色い三角形をあしらったポスターやのぼりが飾られていた。大地の芸術祭。3年に一度この地域で開かれる大規模なアートイベントだ。訪れた日はちょうど開催の2日前であった。道の駅クロス10十日町は駅から15分ほど歩いて商店街が切れたあたりにあり、中心市街地の一端になっている。大地の芸術祭では主要な拠点の一つとなる。

準備に追われる中、笑顔で迎えてくださった財団法人十日町地域地場産業振興センター専務理事の岩船眞人氏にお話を伺った。

岩船眞人理事
岩船眞人理事
──ほくほく線は乗客が多いですね。
そうですね、十日町で下りる人は多くないかもしれませんが、北陸へ行く人の利用は非常に多いです。運行する北越急行株式会社は全国の第三セクターの鉄道会社の中でも珍しい黒字会社なんです。収益のほとんどは金沢へ行く特急はくたかです。しかしそれも2年後に北陸新幹線が開通するまでのこと。開通すれば長野の方から新幹線がつながりますから誰もこっちは通らなくなるでしょう。ですからそれまでに、しっかり経営基盤を確立しつつ、通過客に依存しないように布石を打っておかないといけないわけです。

──冬は雪が多いのですか。
雪は3mに達することも珍しくありません。そのおかげで水に恵まれてまして、魚沼産コシヒカリや日本酒の産地としても知られています。
十日町は縄文土器の中でも高い技術を要する火焔型土器が大量に見つかっており、信濃川沿いの集落として古代から高度な文明があったといわれています。冬の副業として飛鳥天平の時代から麻織物の生産が盛んで、戦国時代には上杉家によって縮布の原料となる青苧(あおそ)の栽培が奨励され財政を支えました。明治時代には絹織物に転換し、その後も日本を代表する織物産地として日本の繊維産業を牽引してきました。今ではずいぶん規模は小さくなりましたが、それでも国内では主要な織物産地です。

──大地の芸術祭が間もなくですね。
7月29日に行われた開会式
2012年7月29日に行われた開会式
「大地の芸術祭」は「越後妻有アートトリエンナーレ」ということでして、2000年から3年に1度開催しています。今年で5回目となります。
広大な地域にアート作品が点在しており、とても一度ですべてを見ることはできません。今回も100種類の公式ツアー(巡回コース)を設定し、中型バスなどの交通手段を用意しています。

クロス10の隣にある市施設「越後妻有里山現代美術館/キナーレ」がこのイベントの中心的な会場となります。1階のイベント広場には16トンもの大量の古着を使った巨大なインスタレーションが展示されます。このイベントに合わせてキナーレの2階にあった物販店をクロス10の1階に移し、その後には東京・代官山にも負けないようなおしゃれなカフェ・レストランを導入しました。物販店は1階に移ったことでお客様がより立ち寄りやすくなったと好評です。キナーレは厳密には道の駅ではありませんが、今後は、このようにキナーレとクロス10をより一体的に考えて運営していきたいと考えています。

(注1) 「クロス10」は「財団法人 十日町地域 地場産業振興センター」の施設である。今年3月に改装工事を終え、4月よりリニューアルオープンした。受付部分に大きな地図と情報コーナーを新設、老朽化した飲食コーナーを廃止、モダンな内装のカフェをテナントに入れキナーレから移した和装小物店などと組み合わせた。食品などの特産品売り場をキナーレに近い側に設置し連動性を高めた。2、3階は会議室やホールがある。シンボルはギネスブックにも載る高さ10メートル、1万1655個からなる「つるし雛」。

(注2) 「キナーレ」は、1階がイベント広場と温浴施設、2階が現代アートの美術館である。指定管理者として(財)十日町地域地場産業振興センターが運営を受託している。
2階の新しいカフェ・レストラン運営の中心になっている美人料理人の長谷川さんは岩手県出身のIターン。東京のレストランで経験を積み、大地の芸術祭がきっかけで十日町を気に入って移住してきたという。

(注3) 「越後妻有」は、新潟県十日町市と津南町の2市町(当初は6市町村だったが、川西町・中里村・松代町・松之山町が十日町市と合併)、合計760㎢という東京23区(621㎢)よりも広い面積の地域を指す。十日町市長が実行委員長となり、北川フラム氏が総合ディレクターで、前回からはベネッセの福武総一郎氏が総合プロデューサーとなっている。
地域に内在するさまざまな価値をアートを媒介として掘り起こし、その魅力を高め、世界に発信し、地域再生の道筋を築いていくことを目指す「大地の芸術祭の里」の活動成果の3年ごとの発表の場として位置づけられている。前回は世界40カ国・地域から約350組のアーティストが参加し、作品点数は370点。

地場産業振興センター
地場産業振興センター
──地場産業振興センターの役割は?
経済産業省の所管で全国に35ヶ所ぐらいあるんですが、地場産業を振興するわけです。横のつながりもあって、以前は互いの特産品を集めて物産展をしたりしていたんだけど、民間と比べて魅力ある商品が集まらなくて、最近はあまり行われなくなりました。
私共のおみやげ館は、地元の織物の製品とか、お米やお酒をはじめ、十日町地域の特産品を販売するのが目的です。主には観光客のお土産、お中元お歳暮などのギフト需要、あとは帰省客が東京に帰るときのお土産とかね。だから地元の人の日常的な買い物とは違いますね。最近うちでは一部に農産物の直売も始めたんだけど、売場構成が難しいですね。特産品をある程度上質な売り場にすると、そこに土の付いた野菜を置くのはちょっと合わないんですよね。別棟にできればいいんだけど予算がないから、一緒に置いてますけど。

クロステンでは十日町市との友好都市交流フェアというのを今年から行っていて、6月と秋に、山形県川西町のサクランボとか、和歌山県田辺市のウメとか、鹿児島県指宿の黒豚とか、沖縄県久米島のマンゴーとかね。地元の人達も喜びますよ、この辺りは果物があまり採れないものですから。フェアーのときはクロス10のカフェレストランでそれらの食材を使った特製ランチメニューを作ったりしてね。やってますよ。

これまではね、道の駅としてはあまり意識していなかったんですよ。だから建物も道の駅らしくないと良くお客さんから言われます。それで去年改装の時に情報コーナーを集約して、受付と兼ねて一人担当者を置いて案内係にしたら、結構喜ばれています。これからはね、キナーレとあわせて、「現代アートも温泉もある道の駅」としてね、アピールしていこうかと思ってます。横の連携もね、未知倶楽部さんぐらいしかもうないと思うけど、友好都市と同じように道の駅の産品交流なんかしたいんですよね。特に冬場は雪で集客が悪いから、そういう時に地元の人向けにやれるといいんだよね。

──非常用電源をお持ちとのことですね。
これは建物ができた30年ぐらい前からあります。燃料は重油で、中越大震災の時に使用されました。1日か2日は持ったと思います。以前は冷暖房を重油で賄っていたのでよかったのですが、設備の刷新で今年から冷暖房設備を変え、重油を使わなくなったので、非常用だけに重油を備蓄することになっています。設備を変えたいのですが、4〜5千万円はするということで、まだ着手できていません。

──定置用蓄電池に興味がおありとのことですが。
そうですね、費用やどれくらいの大きさの設備なのかもまだよくはわからないのですが、停電に備えることは必要と思っています。

実はクロス10は、災害時の避難場所に指定されてます。昨年7月29日の豪雨災害の時にも10数名が10日間ほど生活しておられました。幸い電気も水も通っておりましたので大きな混乱はありませんでした。夜間は職員交代で泊まりました。弁当やインスタント食品などの食事や布団は市から配給されました。キナーレにある温浴施設は被災者には無料開放されました。電気が停まると、ポンプが止まるので建物内の水も止まります。風呂も循環式ですから、使えなくなります。電気の備えは必要です。

太陽光パネルはね、日照時間が短いのと、雪が深いからパネルが埋まってしまって発電できない期間がありそうだなということであまり現実的ではないと思ってます。

──無水トイレについてはいかがですか。
  水や電気を使わないというのはとても良いと思います。災害時に使えるのも良い。前向きに検討したいと考えています。

──急速充電器についてはいかがですか。
県が黒崎パーキングエリア(北陸自動車道、新潟市)に充電スタンドを設置したと聞いています。県としてはEVに力を入れているのではないかと思います。導入の打診などは特にありません。ニーズについては特に感じているわけではありません。

──十日町市では改造EVを開発しているとの報道がありますが、道の駅との関連性はありますか?

開会式ではEVも登場
「大地の芸術祭」開会式ではEV展示も
「グループ夢21」という異業種交流会が十日町市にはあります。そこに共和自動車というディーラーさんがおられ、会員の製造業の人達と一緒に一度作ってみようということで、長岡市のEV研究をしている会社(注 EVhonda)に技術支援してもらいながら、ホンダの軽ワゴン(バモス)を改造しているんです。確かリチウムイオン電池ですよ。地場産業振興センターとしては交流会のメンバーに入っています。これまでは技術的な話が中心だったので、道の駅との関連性は今のところありません。そうしたらたまたま、大地の芸術祭の総合プロデューサーである福武総一郎さんがEVに熱心という話を聞きましたので、今年は芸術祭に来られた時に、その改造EVを見せようという話になっています。
私の個人的な考えとしては、次回の芸術祭のときには、クロス10にEVを用意しておいて、乗り換えてコースを回ってもらったり、電気バスを導入したりすれば良いのではないかと考えていますよ。それに充電スタンドを設置するとか。今から準備していかないと、3年はあっと言う間だからね。

──それは良い考えですね。3年後であればEVの車種も増えているでしょうし、越後妻有地域内に充電ステーションも整備して、エコな芸術祭にできそうです。メーカー各社もEVとアートを絡めたPRの場として興味を持つのではないでしょうか。EVは美しい自然の中をゆっくり走るときに真価を発揮すると思います。

【雑感】
首都圏でも毎年報道されている「大地の芸術祭」は年を追うごとに参加アーティストも増え、市民の間にも根付いてきているようだ。こうしたソフトウェアと道の駅が今後さらに結びつきを強め、そこにEVや地域での創電を組み合わせることができれば、道の駅エコステーション化計画が提唱する平時のコミュニティに根差した取り組みとなりそうだ。

執筆者

未知倶楽部事務局  取材:2012年7月27日

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