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九州道の駅探検記

最終回 九州・山口 道の駅探検記 道の駅水辺の郷おおやま(大分県)

2012年05月07日

 今回のレポートは私が大きくかかわった道の駅「水辺の郷おおやま」(大分県)の開業当時の事を書きたいと思います。

 この駅は2004年12月12日に開業した駅で、今年で8年目になります。私がこの駅に関わったのは開業前の準備期間1年、オープンしてから1年程の2年程度でしたが、更地の状態からハードとソフトを立ち上げ、開業1年目という大変な時期に責任者として関わることが出来た経験は現在の私にも大変役立っています。水辺の郷おおやまは、九州最大の都市、福岡都市圏から九州一の観光集客数を誇る「阿蘇九重地方」に向かう国道沿いにあり、開業前から観光道路として週末に多くの交通量がありました。観光道路の傾向が強いという事は平日と週末やオンシーズンとオフシーズンの売上格差が激しいと予想しました。

 私は10年間、国内外のリゾート会社に勤務した経験がありますが、その頃の流れではオンシーズンが大黒字、オフシーズンが大赤字、決算でかろうじて黒字を確保できるかという状態でした。また沖縄のリゾートではトップシーズンに台風が直撃し、1台風あたり1,000万円くらいの売上減があり、当たり年では5個の台風で5,000万円の売上を落とす事があります。その売上をオフシーズンにカバーしようとしても到底無理という状況がありました。その当時から、いかにしてオンとオフの売上格差を小さくするかという事を考えていました。

 そこで水辺の郷おおやまの開業準備中から安定した売上と利益を確保する為、売上ソースを複数持つことを念頭に準備しました。駅本体での営業、商品開発したオリジナル商品の卸売業、地元食材の業務用(飲食店向け)卸、通信販売、福岡都市圏へのアンテナショップ出店、イベント・催事等への積極参加などを計画し、それを可能とする人材の発掘を行いました。直売所の店長に必要なスキルとして、店内の運営管理及び外販営業や管理、商品発掘・開発の為の生産者やメーカーとの折衝などが必要であり、食品流通に関しての総合的なスキルを判断して、食品卸会社の福岡支店長だった人材をスカウトしました。レストランの料理長には福岡のホテルで総料理長を務めながらデパ地下での販売も経験のあるフレンチ出身の料理人をスカウトしました。責任者をよその地域から入社させることについて会社の役員クラスは反対でしたが、なんとか説得しました。

 そんなこんなで開業を迎えたのですが、開業当初はお客様からの不満の声が続出しました。生鮮野菜の種類や量が少ない、カフェテリアスタイルのレストランの精算方法が分かりにくい、POPが少なくて使い方が分からないなど、運営側の意図したところと消費者のずれみたいなものが多く出ました。しかし1つ1つの不満を打ち消す対策を地道に行う事で3カ月後くらいからそういった声も聞こえなくなりました。  直売所の店長は毎日営業時間中店頭に立ち、お客様と話してニーズのある物を探して販売する。料理長はレストランの前に出てお客様の感想を聞き料理内容を変えていく等の地道な活動で1年目の結果は、私が計画した売上の約2倍に達しました。

 従業員が運営に慣れた頃から週末を中心に外部のイベントや催事に出店するようになりました。また外販の売上を上げるため、福岡で食品見本市に出展するなど積極的の外に打って出るようになりました。こういった外への販売強化の最中に私は道の駅を離れ運営会社の本社に戻りました。その後独立して現在に至っています。

 先日GWに「水辺の郷おおやま」を訪問して現駅長(前直売所店長)にあって話をしましたが、現在では外部売上と駅店内売上の売上比率が50/50になったようで、駅本体は週末の売上が多く、外販は平日が売上を上げてるとの事です。4年前に福岡市内にオープンした道の駅のアンテナショップも好調で2年前に増床してさらに売上アップしています。

 私が道の駅の運営を離れ早5年くらい経ちましたが、「売上ソースを複数持ち、経営の安定をはかり、地域の総合販売力を向上させる道の駅」という私が理想とした道の駅像を具現化してくれた、水辺の郷おおやま現駅長をはじめスタッフに感謝したいと思います。

 今回のレポートが九州・山口道の駅探検記の最終回となります。今まで読んでくれた方々に感謝申し上げます。
株式会社三雲企画事務所 代表取締役 三雲浩嗣
執筆者

且O雲企画事務所 三雲浩嗣

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